クリミアの火の粉は飛来するか
韓国紙セゲイルボ
迫られる安保戦略の再整備
ウクライナは1994年、核兵器を保有しない条件で米国とロシアなど5大核保有国から領土主権と安全保障を約束された。しかし、この「ブダペスト了解覚書」はもう紙切れ同然だ。
韓国と米国はこれまで北朝鮮に「核兵器を放棄すれば、領土主権と安全保障を担保する」という交渉カードを切ってきた。だが核兵器をロシアに譲渡したウクライナはロシアのクリミア侵攻に対応無策だ。これをみて、北朝鮮は核兵器開発を押し切ってきたことが正しかったと安堵(あんど)のため息をつくかもしれない。
中国はどうなのか。「クリミア事態の静かな勝者は中国だ」という分析まで出ている。中国は沈黙で一貫している。米国と欧州連合(EU)がロシア制裁を強化するほど、ロシアは中国に近づくことは間違いない。習近平中国国家主席とプーチン露大統領が開いた中露新蜜月関係はより一層強固になるだろう。ロシアが中国のライバルでなくパートナーになる事態展開は欧米が最も避けたいシナリオだ。
ロシアが特別な代価なしにクリミアを併合するのを見ながら、中国が南シナ海と東シナ海の領土紛争でロシアを見本にするのではという懸念が米国から出ている。フィリピン、ベトナム等は穏やかでないだろうし、東シナ海で尖閣諸島をめぐって中国と日本間の緊張が高まることもあり得る。
もはや韓国などの国家はクリミア事態の火の粉が飛んでこないように各自生きる道を探し出すほかない。米国や国連など国際秩序を維持するシステムが崩壊している現実が赤裸々に現出したためだ。
米国は何より戦費を調達できず、ウクライナ事態に軍事介入する意欲もない。イラク戦とアフガニスタン戦で史上最高の戦費を投じた米国は国の生活を正常化しようとまず国防費から削っている。
オバマ大統領は欧州に配置している米軍事力をアジアへ向ける「アジア基軸」移動戦略を公言してきたが、プーチンの膨張主義に直面したオバマは北大西洋条約機構(NATO)の軍事力増強を考えなければならなくなった。アジア基軸移動戦略は廃棄または無期延期を余儀なくされる可能性が大きくなった。
朴槿恵(パククネ)政府はクリミア半島事態を見守りながら、国家安保戦略の再整備を迫られる。国際社会に力の空白時期が到来しており、“新冷戦”は韓半島の“旧冷戦”事態をより一層悪化させる方向に展開するとの現実認識を出発点としなければならないだろう。朴政府の第一国政アジェンダは外交と安保である。
(鞠箕然〈ククキヨン〉ワシントン特派員、3月24日付)