感染者数や接種率に地域格差 フランス
貧富や政治志向も影響
仏保健省によると、新型コロナウイルスのワクチン接種率や感染数で、地域による貧富の差や政治志向の影響が顕在化している。特にマクロン政権に厳しい仏南部は感染者数も多く、ワクチン接種が進んでいない。
南部の右派・国民連合の牙城といわれるプロバンスアルプコートダジュール地域圏(PACA)は、左派も強い地域で、ワクチン接種率は全国平均を大きく下回っている。特にPACAの人口1万人を切るオートプロバンスペイドゥバノンや、同じ南部オクシタニー地域圏の山間部の町、セベェンヌでは、接種率が全国平均の3割に満たない。
南部は中央政府への不信感が強く、政府が9日から実施を開始したコロナ対策のワクチン接種完了証明の健康パスの適用拡大や医療・介護従事者へのワクチン接種義務化に強く反対しており、国民連合や左派による抗議デモも盛んだ。南部マルセイユはチュニジア系移民の最大のコミュニティーが存在し、アラブ系住民の割合が多いことや貧困層も多く、ワクチン接種率が低いだけでなく、感染者数も多い。
フランスは来春の大統領選挙と国民議会選挙を控え、政治の季節に突入しており、ワクチン接種を含む政府のコロナ対策は、選挙の争点になっている。自営業者の支持者が多い国民連合は、ワクチン接種義務化には反対だ。左派は、人権重視で個人の選択を尊重する観点やワクチン開発の背後で巨大製薬企業と政治の癒着を疑っており、健康パスやワクチン接種義務化に反対している。
(パリ・安倍雅信)