元徴用工判決で原告支援者 資産現金化「年内難しい」

資産現金化「年内難しい」

 元徴用工訴訟をめぐる一昨年の韓国大法院(最高裁)判決を受け、賠償命令を受けた新日鉄住金(現、日本製鉄)の韓国内資産に対する現金化が来月4日以降可能になる問題で、韓国の原告を支援する複数の関係者は21日、本紙取材に「年内の現金化は簡単ではなさそうで、年明けになるかもしれない」との見通しを明らかにした。
(ソウル・上田勇実)

 韓国の大邱地裁浦項支部は先月、新日鉄住金が韓国鉄鋼大手ポスコと設立した韓国内合弁会社の株式差し押さえに関する通知について、書類が同社に届いたと見なす公示送達の効力を来月4日に発生させる手続きを行った。

 裁判所が現金化を命じた場合、株式売却などの手続きが進み日本企業に実害が生じるため、日本側が対抗措置に踏み切る可能性があり、日韓関係のさらなる悪化が憂慮されている。

 同関係者は4日を過ぎても現金化が速やかに行われない理由として「すでに着手した資産評価の結果が出るまでまだ時間がかかる」ことを挙げた。

 また評価結果が出た後も、韓国の裁判所は①原告への株式授与②ポスコによる株式買い取りと原告への現金支払い③競売――など幾つかの方法をめぐり原告側に意見を求めてくるといい、そのやりとりにも時間を要するとみられる。

 ただ、原告は早期賠償を求めており、当面、現金化の方針が撤回される可能性は低い。原告への金銭的補償を視野に入れ韓国側が提案した代替案も問題解決につながるかは不透明だ。

 日韓共同協議体の設立は日本側の人選が難航し、文喜相・前国会議長が提出した後、廃案になったものを引き継いで改めて発議された関連法案の成立も提出者に与党議員が含まれず、審議が進まない可能性もある。

 韓国の文在寅大統領は大法院判決が1965年の日韓請求権協定に反する国際法違反の状態をつくり出していることへの政府責任には触れず、司法判断の尊重を理由に事態を静観したままだ。

 青瓦台(大統領府)は「日本企業が自発的賠償を頑(かたく)なに拒んでいることを口実に日本政府が韓国との交渉の場で解決策を示さないので、現金化もやむを得ないと考えている」(同関係者)という。