トランプ氏の日米同盟不満、自主防衛力で「片務性」是正を


対中技術優位の維持へ連携

 トランプ米大統領は来日直前に日米安全保障条約を不平等だと不満を示したが、28日に行われた日米首脳会談はこれまでと変わらない「蜜月」モードだった。トランプ氏の真意はどこにあるのか、はっきりしない。トランプ氏の「同盟観」には不安を抱かざるを得ないが、日本は発言に一喜一憂せず、自主防衛力を増強して日米同盟の片務性を黙々と是正していくしかない。
(早川俊行)

 「日本の多くの自動車会社がミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ノースカロライナなど多くの州に進出している。そのことには大変感謝している」

 首脳会談の冒頭、トランプ氏が日本に「謝意」を示したことは大きな驚きだった。というのは、そのわずか2日前、米メディアのインタビューで「米国が攻撃されても、日本は助ける必要が全くない。ソニーのテレビでそれを見ていられる」と、日米安全保障条約が不平等であることに不満をぶちまけたからだ。

 安倍政権が防衛費を増やし、同盟強化を積極的に推し進める中で、こうした発言が出てくることは日本としては遺憾としか言いようがない。だが、27日夜に行われたオーストラリアのモリソン首相との会談でも、「米国は同盟国との間に巨額の貿易赤字を抱えながら、軍事的に支援している」と不満を述べており、トランプ氏の同盟観はもう変わらないと覚悟するしかない。

 ただ、トランプ氏が問題視した日米同盟の片務性は、強固な同盟を維持していく上でネックとなってきたことは事実である。日本は「自分の国は自分で守る」態勢を強化して片務性を改めていくことは、トランプ氏に言われなくても進めていくべきテーマである。

 一方で、首脳会談では極めて重要な内容も話し合われている。外務省のブリーフィングでは明らかにされなかったが、ホワイトハウスの発表では、両首脳は「日米同盟の技術的優位の維持し、機密情報や技術共有を保護するシステムを強化する」ことで一致したという。これはハイテク分野でも台頭する中国に日米が共同対処することを意図したものだ。

 中国の急激な軍拡により、アジア太平洋地域の軍事バランスは大きく揺らいでおり、日米が協力して軍事技術の優位を維持することが欠かせない。また、中国の技術窃盗や通信機器大手ファーウェイ(華為技術)への対応でも日米の連携が一段と重要になる。

 トランプ氏が最重要視する対中政策で連携を深めることは、日米同盟の価値を高めることにもつながるのは間違いない。