トランプ氏、初の拒否権
非常事態宣言「無効」に対抗
トランプ米大統領は15日、メキシコ国境に壁を建設するために出した非常事態宣言を無効にする議会決議に対し拒否権を発動した。トランプ氏による拒否権の発動は就任以来初めて。議会に対して、選挙公約だった壁建設を推進するため譲らない姿勢を鮮明にした。
トランプ氏はホワイトハウスで、議会決議は「数多くの米国人を危険にさらす」と主張。「国境から犯罪者や薬物が侵入している。議会は決議を通す自由があるが、私は拒否する義務がある」と述べ、拒否権を発動する文書に署名した。
決議は野党民主党が多数派を握る下院で先月可決。与党共和党が多数派を握る上院でも共和党議員12人が賛成に回り今月14日に可決した。造反した共和党議員の多くは壁建設自体に賛成しつつも、トランプ氏の非常事態宣言が憲法が定めた議会の予算編成権に違反し、将来に禍根を残すと主張している。
民主党のペロシ下院議長は、拒否権を覆すための採決を26日に行う考えを示した。トランプ氏の強引な手法や共和党内の不一致を改めて印象付ける狙いがあるとみられるが、拒否権を覆すには上下院それぞれ3分の2以上の票が必要で、実際に拒否権を無効にするのは困難な情勢だ。
(ワシントン 山崎洋介)