ゲリラとの和平交渉進めるコロンビアのサントス大統領
来年5月の再選戦略にも好材料か
南米コロンビアで来年5月、大統領選挙が実施される。同国は現在、半世紀以上続いた極左ゲリラ組織との和平交渉を進めており、今回の大統領選挙はコロンビア和平の行方を決める重要な選挙となる。
(サンパウロ・綾村 悟)
キューバが仲介、政治参加で合意
世論調査会社のギャラップ・コロンビアは12日、来年5月に実施されるコロンビア大統領選挙に関する最新の世論調査結果を発表した。
それによると、大統領選挙が現時点で実施された場合、現職のフアン・マヌエル・サントス大統領(62)が決選投票で次点に大差を付けて勝利すると説明している。
現職のサントス大統領の支持率は、3カ月連続で上昇しており、最新の支持率は45%を超えているという。
現在、大統領選挙への立候補を表明している有力候補は3人。現職で中道右派のサントス大統領と、対ゲリラ強硬派で知られるウリベ前大統領派のズルアガ元蔵相(54)、それに緑の党からの公認候補を目指しているベタンクール元上院議員(51)だ。
サントス大統領には、再選に向けて多くの追い風が吹いている。一つは、サントス政権が、極左武装ゲリラとの内戦集結のために始めた「和平交渉」が山場を越えようとしていること。コロンビア国民の多くは、半世紀以上続いてきた内戦に疲れており、和平実現に大きな期待を抱いている。コロンビアでは、内戦の犠牲者が20万人を超えると言われており、内戦集結はコロンビア国民の宿願でもある。
また、近年の治安改善によるところが大きい同国の経済成長もサントス政権の支持率を後押ししている。また、サントス政権に対する米国からの信頼も厚い。南米で数少ない親米派のコロンビアは、過去に多くの援助などを米国から受けてきた経緯がある。
そのサントス大統領は、ウリベ前大統領の元で国防相などを務めた後、ウリベ氏の後継者として2010年6月の大統領選挙で当選した。
サントス政権は大統領就任後、関係が悪化していた反米左派のベネズエラと国交を回復、内戦犠牲者の補償問題解決にも乗り出したことで大きな注目を集め、一時は75%もの支持率を誇った。
その後、一昨年の暮れに始まった極左ゲリラ武装組織、コロンビア革命軍(FARC)との和平交渉が停滞、他の国内事情も加わり、3カ月前には政権発足以来最も低い支持率を記録した。
しかし、先月、キューバの首都ハバナで行われた和平交渉の場で(キューバは和平交渉を仲介している国の一つ)、交渉条件の中でも最も困難とされていた「極左ゲリラの政治参加」に関する交渉が合意に至り、和平交渉実現への道筋がついた。そのことが「再選して和平交渉を見届けたい」との強い意思を持つサントス大統領への支持率を大きく伸ばすことにつながった。
一方、対ゲリラ強硬派として知られるウリベ前大統領はサントス大統領が進める和平交渉を批判した上で対ゲリラ強硬路線の継続を主張、サントス大統領の対抗馬としてズルアガ元蔵相を支援しながら、自らは来年の上院議員選挙への出馬を表明ずみだ。
ズルアガ候補は、現時点ではサントス大統領に支持率でダブルスコアに近い差を付けられているものの、ギャロップ社の調査では、30%以上の有権者が誰に投票するかを決めかねている浮動票となっている。ズルアガ候補を支援するウリベ前大統領は、現在もコロンビア国内でメディアへの露出度が高く、コロンビア政界にも強い影響力を持つだけに、大統領選挙がサントス氏でほぼ確定したというわけではない。
また、ベタンクール元上院議員が公認候補に名乗りでたコロンビア「緑の党」の実力もあなどれない。緑の党は、来年3月に緑の党の統一候補を決める大統領選挙の予備選を行うが、同党は前回2010年の大統領選挙では、元ボゴタ市長のモックスを擁して善戦、サントス大統領との決選投票にまでもつれこんだ経緯がある。
ベタンクール氏は、2002年に女性大統領候補として地方を巡回中にコロンビア革命軍によって拉致され、6年間をジャングルの中で捕虜として過ごした。政治腐敗と汚職追求に対する姿勢はコロンビア国内外で幅広い支持を受けてきた経緯があり、知名度がある。
コロンビア政府と左翼ゲリラ間の和平交渉は、着実に進展はしているが、内戦がいまだ続いているのも確か。今月8日にもコロンビア南部で軍人と民間人を含む9人が、左翼ゲリラによるテロ攻撃の犠牲者となった。
来年5月のコロンビア大統領選挙は、半世紀以上続いてきたコロンビア内戦の行方を決める重要な分岐点となる。