若者中心に米国でキリスト教離れ加速
米国でキリスト教徒の減少に歯止めがかからない。米調査機関によると、70%が自身をキリスト教徒だと答えたものの、2007年の前回調査より約8ポイントも下落した。これに対して「所属宗教なし」は急増し、2割を超えている。政治や社会への影響力が大きいキリスト教徒の変移は、今後の米国社会に変化をもたらす可能性もある。
(ワシントン・岩城喜之、写真も)
7年で8ポイント減、無宗教が急増
同性愛者は“反宗教的”傾向
調査は米調査機関の「ピュー・リサーチ・センター」が昨年6月から9月まで約3万5000人を対象に実施し、今月12日に発表した。
それによると、自身をキリスト教徒と考える人は70・6%で、2007年の前回調査の78・4%から7年間で約8ポイント落ち込んだ。
同センターは、米国の成人人口(約2億4500万人)を基に、現在のキリスト教徒数を約1億7280万人と推定。これは、約1億7810万人だった07年の調査から、約500万人も減ったことになる。
一方、「所属宗教なし」は07年より6・7ポイント伸びて22・8%となり、同センターの調査として初めてカトリック人口を超えた。
トリニティ大学(コネチカット州)の研究機関「アメリカ宗教意識調査」(ARIS)が1990年と08年に行った調査では、キリスト教徒の割合が18年で約10ポイント下落していた。この結果と合わせて見ると、キリスト教徒の減少に歯止めがかからないどころか、加速している状態にあることが分かる。
キリスト教離れはすべての年齢層で起きているが、特に若年層で顕著に見られる。1928~45年に生まれた世代は85%もの人が自身をキリスト教徒としたが、81~89年と90~96年に生まれた世代は、それぞれ57%、56%と低い数字だった。
同センターは「キリスト教徒は相対的な割合だけでなく、絶対数でも減少している」とし、その要因として「高齢者よりも若年層でキリスト教との関連が少なくなり、加入率が低いことにある」と分析した。
ライフスタイルが多様化したことで、「礼拝に行かないことへの罪悪感や後悔の念を小さくしている」(ワシントン・タイムズ紙)ことが一因にあるとの指摘もある。
ブラッドフォード・ウィルコックス・バージニア大学准教授は同紙に対し、同性愛者の権利、妊娠中絶に否定的な教会の姿勢や晩婚化も、若者のキリスト教離れの要因との見方を示した。
キリスト教人口が全体的に縮小する中で、例外なのがプロテスタントの福音派だ。福音派は成人人口に占める割合で前回調査よりわずかに下回ったが、全体の信徒数は約200万人も増えている。
主流派プロテスタントが推定500万人も減少し、「最大の落ち込みを見せた」(同センター)ことと明暗を分けたと言える。
福音派の中には、同性婚や中絶に対して反対姿勢を明確にし、社会的な問題について大規模な集会を開く教派も多い。福音派の増加は、積極的な活動を展開する同派の勢いを表していると言え、下降線をたどる米キリスト教にあって注目すべき点だ。
またカトリック教徒は、プロテスタントに比べてヒスパニック系の割合が高くなったことも分かった。カトリック教徒のうちヒスパニックは3分の1以上を占め、若年層では白人とほぼ同じ割合になった。この状態が続けば、20年以内にヒスパニックがカトリックの過半数を超える可能性もある。
一方、調査は同性愛者の宗教に対する姿勢も浮き彫りにした。調査結果によると、同性愛者のキリスト教徒は全体平均を大きく下回る48%で、「所属宗教なし」が全体の2倍近い41%だった。
さらに同性愛者は、一般の人に比べて約3倍も無神論者が多く、「所属宗教なし」のうち「宗教は重要でない」と考える割合も高かった。同性愛者は宗教に所属していないだけでなく、“反宗教的”な傾向が強いと言えよう。






