世代交代の“時”に実現へ ダーウィン進化論体制の崩壊

進化論vsID理論 20年戦争 (10)

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2012年、米シアトルで開かれたID夏期セミナーで生物学者ジョナサン・ウェルズ博士の講義を聴く学生ら

 20年戦争では査読論文に関してもダーウィン進化論陣営は後退している。

 査読とは学術誌に投稿された論文を同じ専門分野の研究者が審査するために読むプロセス。進化論者たちは以前、「ID派科学者たちの成果が専門誌の査読論文として掲載されておらず、IDは科学ではない」などとID側を批判してきたが、ID派科学者リーダー、スティーヴン・マイヤー博士によると、ID派科学者による査読論文の数は50以上に達している。

 IDは着実に科学界の一角を占めてきているのである。

 だが、ID運動の成果として最も重要なものの一つは、ID夏期セミナーによる若い学生らの啓蒙・教育が進んでいることである。

 ID夏期セミナーはディスカヴァリー研究所科学文化センター(CSC)の主催で2007年以来、毎年7月にシアトルで開催。これまでに米欧を中心に170人以上の大学生、大学院生が参加してきた。その多くは、生物、化学、物理などの各分野で博士号を取って活躍することが期待されている優秀な学生たちである。

 同セミナーでは、主要なID理論科学者が最先端の研究内容を講義。ダーウィン進化論をはじめとする唯物論科学に疑念を持っていたり、ID理論に興味がある若い学生たちにとってはとても魅力的な絶好の機会となっている。今年も7月12日から20日までの日程で行われる予定だ。

 「セミナーは多くの同志の科学者と出会わせてくれましたし、そして何よりもIDに関する私のスタンスを確固たるものにしてくれました」

 こう感想を語るのは、有名大学の博士コースで生物学を学んでいるトレイシー(仮名、他2人も)だ。今はIDについての立場を明らかにしないようにしているが、博士号を取った後は、ID理論に関する研究に貢献したいと語っている。

 最近、進化生物学の分野で修士号を取ったばかりのアンドルーはこう語る。

 「講義や対話は私のIDについての見方を発展させるのにとても有益でした。IDの科学研究が進んでいることを知り、本当に興奮しました」

 アンドルーは次のステップとして、生物学博士号を取って、IDのパラダイム(枠組み)を発展させる科学研究に取り組むことを目指している。

 サラは生物学の博士コースで学んでいるが、「ID理論がいかに整合性がとれているかについて完全な理解を与えてくれました」と感慨深く語っている。

 学生たちにとって共通して良かったのは、ID理論を理解する若者同士のネットワークを形成できたことだ。フェイスブックを使って活発に交流しているという。

 ID運動リーダー、フィリップ・ジョンソン米カリフォルニア大学バークレー校元法学教授は、有名な物理学者マックス・プランクの言葉を引用しながら、科学革命はある一つの時点で古い考え方を葬り去るとして、次のように話している。

 「新しい考え方は、偏見を持たない若い研究者たちがこれを受け入れるようになって、初めて定着する。古い頑なな科学者たちが引退する中で、科学革命が現実のものとなるのだ」

(編集委員・原田 正)