検閲、抑圧、そして追放 進化論側がとった戦術
進化論vsID理論 20年戦争 (5)

細菌鞭毛モーターのCG図(米ディスカヴァリー研究所提供)。鞭毛モーターは大腸菌などが推進力として持っている回転モーター。約50個のタンパク質部品が精巧に組み合わさってできており、ネズミ捕りと同じ特徴を持つ
インテリジェント・デザイン(ID)運動が急速に台頭する中、ダーウィン進化論者らがまず取ったのは、ID理論に正式に反論することよりも、「IDは創造論。科学ではない」という偽情報をネットやマスメディアを通じて流すというやり方であった。
例えば、「若い地球説」という創造論は、聖書に基づくとして「世界は1万年前から5700年前の間に1日を24時間とする6日間に創造された」と論じており、現代科学が解明した事実と合わないが、そうした説とID理論を混同させようというものだった。
前回述べたように鞭毛モーターなどは還元不能の複雑性という特徴を、遺伝子やタンパク質は特定された複雑性という特徴を持っている。ID理論はこれらの特徴から純粋に科学的な推定を行っているのであって、聖書や宗教的信念に基づくものではない。
しかし、2004年頃から、ダーウィン進化論擁護者たちはIDは「宗教で、科学ではない」というレッテルを貼るだけでなく、学問の自由を侵害する露骨なやり方を相次いで取り始めた。科学者にとって“死”を意味する、研究所・大学のポストなどからの追放である。
例えば、2004年、ID派科学者リーダー、スティーヴン・マイヤー博士が書いた論文が査読を経て学術誌に掲載されたのだが、それを担当した編集者リチャード・スターンバーグ博士は批判され、最終的に解雇された。
2005年にはID側にさらに大逆風が吹く。ID理論を公立学校で教えるべきか否かが初めて争われたドーバー裁判に全米のマスコミが注目、ID理論を有名にしたが、判事は「ID理論は科学ではない」と結論付けた上で、公立学校で教えることは政教分離に反し、「違憲」であるとの判決を下したのだ。
判決は、リベラルな米国自由人権協会(ACLU)の資料を“丸写し”したものだったことが後で分かるが、ダーウィン進化論側は「IDは終わった」などと“宣言”するほど、増長していくのである。
そうした空気の中、相次いで起きた追放事件で最大のケースは、優秀な宇宙生物学者ギエルモ・ゴンザレス博士を所属のアイオワ州立大学が追放した事件だ。
同大学の准教授だったゴンザレス博士はID理論の宇宙版とも言える内容の『特権的惑星』をディスカヴァリー研究所のジェイ・リチャーズ博士と共著で2004年に出版。
それが周りのダーウィン進化論者の怒りを買った結果、同大学は2007年5月、同博士の終身在職権を認めない決定を下した。だが、ゴンザレス博士はネイチャーなど科学誌に70近い論文を載せるなど大きな業績を残していたという事実がこの決定の異常さを際立たせているのである。
進化論陣営による検閲、抑圧そして追放などによって2007年頃まではID側には厳しい状況が続いた。マイヤー博士はかつて本紙に「そうした戦術が最終的に行き詰まることは歴史が証明している」と語ったことがあるが、まさにそうなっていく。
上記のような一連の追放事件を取り上げ学問の自由侵害を伝えた、ベン・スタイン主演によるドキュメンタリー映画『追放-インテリジェンスは許されない』が2008年春に公開、反響を呼ぶ中でID側が大きく前進する新たな展開が起きてくるのである。
(編集委員・原田 正)