和解金払うケース増加 裁判闘争での進化論陣営
進化論vsID理論 20年戦争 (3)
デイヴィッド・カペッジ氏のジェット推進研究所(JPL)に対する訴訟は敗訴になったが、近年の法廷闘争では進化論・反ID陣営が多額の和解金を支払うケースが相次いでいる。
英国出身の天文学者マーチン・ギャスケル博士は1975年に米国に留学し、カリフォルニア大学(サンタ・クルズ)で博士号を取得。ネブラスカ大学で物理学と天文学を教えていた2007年、ケンタッキー大学に新設される観測所の所長に応募した。
しかし、雇用を検討していた委員会は、ギャスケル博士がネットで進化論に疑義を示していた記録などから“創造論者だ”として雇用せず、同博士よりも業績が劣る科学者を所長にしたのである。ギャスケル博士は差別を受けたとして2010年11月にケンタッキー州連邦地裁に提訴、その結果、ケンタッキー大学が10万ドル支払って和解した。
次の例は論文掲載を妨害されたグランビル・スーウェル博士に関するものだ。同博士はパーデュー大学の数学博士号を持ち、テキサス大学の終身在職権を持った数学教授である。
博士は11年初め、数学の専門誌Applied Mathematics Lettersに、ダーウィン進化論に批判的な『熱力学第2法則の再確認』を投稿、査読が完了し掲載される予定だった。しかし、「頑固なコンピューター科学オタク」を自称するダーウィン進化論者のブロガーが、同誌の編集者にこの論文掲載を弾劾するよう求めると、編集者は同論文掲載を取り下げてしまった。すでに査読済みの論文の掲載は捏造、盗用などよほどのことがない限り取りやめることができないという編集方針に反する行為だった。
博士が提訴した結果、出版社は1ドルを支払い、スーウェル博士に謝罪する形で和解した。ただ、同誌は博士の論文を掲載することを許可せず、印刷前のデジタル版を博士に公表する権利を与えたのみだった。
三つ目の例は、州立の科学教育施設が表現の自由を侵害したものだ。
保守系のアメリカ自由同盟(AFA)が主催してロサンゼルスのIMAXシアターを借り、DVD『ダーウィンのジレンマ』を上映する予定だった。
『ダーウィンのジレンマ』は、5億3000万年前に前触れもなく一挙にほとんどの動物門が登場したカンブリア爆発にテーマを絞って、ダーウィン進化論の限界を指摘するとともにID理論を分かりやすく解説している科学ドキュメンタリーだ。
しかし、IMAXシアターを管理するカリフォルニア科学センターは、このドキュメンタリーがID理論を支持する内容であることを知り、AFAとの正式な契約にもかかわらず、突然キャンセルしたのである。
これは州立の科学教育施設が検閲を行って表現の自由を侵害した露骨なケース。AFAが提訴した結果、同センターは11年夏、11万ドルの和解金を支払うとともに、上映イベントを許可するように追い込まれた。
ギャスケル、スーウェル両博士のケースに続く和解に、ID運動の拠点「ディスカヴァリー研究所科学文化センター」のケーシー・ラスキン氏(政策アナリスト)は「ID運動にとって歴史的な勝利だ」とコメントした。20年戦争の歴史の中では“ダーウィン体制”側が魔女狩りのようにID支持者・反進化論者を弾圧する冬のような時代があったからである。次回、ID運動を最初から振り返っていこう。
(編集委員・原田 正)