米環境団体にロシアマネー、シェール開発妨害を画策か

 米国で進むシェール開発に反対する環境保護団体に、ロシアマネーが流入している可能性が高いことが分かった。シェール革命による米国産原油・天然ガスの急増がエネルギー輸出に頼るロシアに打撃を与える中、米国の環境保護団体に資金提供して反対運動を煽(あお)り、シェール開発を妨害しようとするロシア側の思惑が垣間見える。(ワシントン・早川俊行)

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三井物産が参画する米テキサス州のシェール資源開発拠点=2014年3月12日(時事)

 米議会の上院環境公共事業委員会は、昨年7月の報告書で、英領バミューダのペーパーカンパニーからシェール開発反対運動を展開する米国内の環境保護団体に多額の資金が流れ込んでいる実態を明らかにした。

 それによると、バミューダの「クライン」という謎の企業が2010、11年の2年間に、サンフランシスコの「シーチェンジ財団」に計2300万㌦(約27億円)を提供。同財団はこれを「シエラクラブ」「天然資源保護評議会(NRDC)」「自然保護有権者連盟(LCV)」などの有力環境団体に分配していた。

 報告書は「環境活動家の多くが『ダークマネー』から利益を得ているのは明らかであり、彼らはその金がどこから来ているのかについて道徳的呵責(かしゃく)を感じていない」と非難。ただ、上院環境公共事業委員会の調査では、クライン社の背後にいる存在までは特定できなかった。

 環境保護団体の資金源などをリサーチしているワシントンの「環境政策同盟」がこの問題を追加調査したところ、クライン社を設立したバミューダの法律事務所「ウェイクフィールド・クィン(WQ)」の関係者らがロシアの政財界、エネルギー業界と深いつながりを持つことが判明した。

 環境政策同盟が先月公表した報告書によると、WQ関係者はロシアのエネルギー産業に重点投資するヘッジファンドの幹部を務めている。また、彼らは、プーチン大統領に近いレオニード・レイマン元情報技術通信相、ロシア第2位の富豪で金融と石油を握る「アルファ・グループ」のミハイル・フリードマン会長、ロシア石油最大手ロスネフチのハンス・ヨルグ・ルドルフ元副会長らが関連する複数の企業で役職に就くなど、政財界の有力者とも接点がある。

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米ニューヨーク州で「水圧破砕法(フラッキング)」によるシェール開発を行うことに反対するプラカード(UPI)

 クライン社への具体的な資金の流れは不明だが、ロシアマネーがWQ関係者を通じて米国の環境保護団体に流れ込み、シェール開発反対運動を後押ししている可能性が高い。

 ニューヨーク州では、環境汚染や健康リスクへの懸念から「水圧破砕法(フラッキング)」によるシェール開発に反対運動が広がり、州当局は昨年末、同法の使用を禁止する方針を発表した。シェール開発を事実上、禁じる内容だ。同様の動きが他州に広がる可能性もあり、環境保護団体の活動はシェール開発に大きな影響を与え始めている。

 ロシアマネーの流入が疑われているのは米国だけではない。東欧のシェール開発反対運動を背後で操っているのもロシアマネーとの指摘がある。北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン前事務総長は昨年、「(欧州を)ロシアの天然ガスに依存させ続けるため、ロシアはシェールガスに反対する環境団体に積極的に関与している」と主張した。