有害な過剰介入、中央集権的な米ホワイトハウス

 オバマ米政権の外交・安全保障政策をホワイトハウスが支配していることに、チャック・ヘーゲル国防長官とジョン・ケリー国務長官が不満を抱いているという。省庁間の調整機能という本来の役割を超え、細部にまで口を挟むオバマ・ホワイトハウスの「中央集権」(ロバート・ゲーツ元国防長官)体質は、効果的な外交・安保政策を妨げる一因となっているようだ。(ワシントン・早川俊行)

外交支配する「5人のギャング」

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オバマ米大統領(左)と大統領の側近バレリー・ジャレット上級顧問(UPI)

 ワシントン・タイムズ紙によると、ホワイトハウスには外交・安保政策を支配する「5人のギャング」がいる。その5人とは、オバマ大統領の長年の側近であるバレリー・ジャレット上級顧問、デニス・マクドノー大統領首席補佐官、スーザン・ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)、トニー・ブリンケン、ベン・ローズ両大統領副補佐官(同)だ。ブリンケン氏は7日に次期国務副長官に指名された。

 ジャレット氏は過激なフェミニストとして知られ、本来は内政が専門だ。オバマ政権は外交・安保問題で政治判断を優先する傾向が強いが、ジャレット氏のような人物が口出ししていることも影響している可能性が高い。

 政権1期目に国防長官を務めたゲーツ氏は、回顧録「責務」の中で、外交・安保問題に過剰介入するホワイトハウスの「マイクロマネジメント」を痛烈に批判している。

 例えば、2010年のハイチ大地震に対する米軍の救援活動で、ホワイトハウスは当時、国家安全保障会議(NSC)の首席補佐官だったマクドノー氏を現地に派遣。これについて、ゲーツ氏は「NSCが作戦面に介入するのはいまいましい」と批判し、「指揮系統を不明確にする」同氏の存在は有害だったとの見方を示した。

 また、ゲーツ氏がアフガニスタンを訪問した際、米軍基地司令部にNSCスタッフとの直通電話回線が引かれていたことに激怒し、すぐに回線を撤去させた。同氏はホワイトハウススタッフとして4人の大統領に仕えた経歴を持つが、「私がホワイトハウスで働いていた時は、NSCスタッフが現地司令官に電話を掛けることなど考えられなかった。オバマ政権ではこれが当たり前になった」と嘆いた。

 11年のリビア内戦をめぐっては、ホワイトハウススタッフが国防総省抜きで大統領と軍事オプションを協議していたこともあった。

 ゲーツ氏は「ニクソン政権以降、オバマ・ホワイトハウスは群を抜いて安保問題に中央集権的だ」と酷評。ヒラリー・クリントン前国務長官もホワイトハウスから同様の扱いを受けていたという。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、ヘーゲル国防長官は先月、シリア政策を厳しく批判するメモをライス大統領補佐官に送り付けた。ヘーゲル氏はシリア空爆の標的を過激組織「イスラム国」に限定することで、アサド政権を利する結果を招いていることに強い不満を抱いているとされ、ホワイトハウスとの不協和音が取り沙汰されている。

 これまでも、地上部隊派遣を否定するオバマ政権の対イスラム国戦略に対し、軍幹部から地上部隊の必要性を示唆する発言が出るなど、ホワイトハウスは国防総省の軍事的見地を十分考慮せずに戦略を策定している印象を受ける。

 同紙はまた、ケリー国務長官もホワイトハウスから浮いた存在と見なされていると指摘した。

 ワシントン・タイムズ紙によると、ある安保当局者は、独裁的に政策決定するオバマ・ホワイトハウスを、7人で構成される中国共産党の最高意思決定機関・政治局常務委員会になぞらえたという。