ブラジル大統領選挙、現職ルセフ氏勢い世論調査で逆転
与党の賄賂認めダメージも
【サンパウロ綾村悟】26日に大統領選の決選投票を迎える南米ブラジルで20日、最新の世論調査が発表された。
民間の世論調査会社ダッタ・フォーリャ社によると、与党・労働党の現職ルセフ大統領の支持率が46%となり、野党・ブラジル社会党のアエシオ・ネベス元上院議員の支持率43%を上回った。16日に発表された前回調査では、ネベス氏の支持率が45%とルセフ氏の43%を凌(しの)いでいた。誤差(プラス・マイナス2%)を含めると、実質的に両候補の支持率の差はないに等しいが、選挙戦の終盤になって現職が勢いづいてきたことが認められる。
野党候補のネベス氏は、汚職やインフレ、社会制度の不備等に不満を抱くブラジルの有権者に向けて、ブラジル政治の「変革」を訴えると同時に、市場寄りの経済政策などを通じて、リセッションに陥ったブラジル経済を立て直すと主張、中間層や富裕層にかけて広く支持を集めることで優位に立ってきた。
現職のルセフ氏は、労働党政権による貧困層支援や過去の経済成長などの成果を強調して票固めとネベス氏を支持する有権者の切り崩しを図ってきたが、選挙終盤になって、前ルラ政権以来、高い政権支持率を保ってきた労働党政権の強みが出てきたと言える。
野党候補のネベス氏は、決選投票での優勢を強固としたものにするため、大統領選挙の1次投票(今月5日)で20%の得票を得たマリナ・シルバ元環境相の公的な支持を受けることに成功したが、有権者の反応は鈍かった。
今回の大統領選挙では、与野党候補共にメディアや公開討論による個人攻撃が目立ったが、決選投票まで1週間を切る現時点では、個人攻撃よりも政策や成果を強調する動きが出ている。
一方、ルセフ氏をめぐっては、石油公社のペトロブラス社から、与党・労働党の関係者に多額の賄賂が流れていたとの疑惑が持ち上がっていたが、18日にルセフ大統領が同疑惑を認める発言を行い、大きな注目を集めた。
問題は、ペトロブラス幹部が、ブラジル国内の特定の業者との契約を優先する代わりに企業側から賄賂を受け取り、その賄賂が与党や与党を支持する政党や政治家に流れていたというもの。
ルセフ氏は、公金流用に関して調査を行うと明言、連邦警察が調査を進めている。政権に近い政治家が汚職に絡んでいた場合、ブラジルの有権者は近年、汚職に厳しい目を向けているだけに、現政権にとって大きなダメージとなりかねない。