11月4日米中間選挙、上院主導権の帰趨が焦点
11月4日の米中間選挙まであと3カ月を切った。下院では共和党の過半数支配が継続することはほぼ確実だが、上院の主導権はどう転ぶか分からない。共和党が上院主導権を奪取し、議会上下両院を支配できるかどうかが焦点だ。(ワシントン・久保田秀明)
共和党が両院支配の可能性
オバマ不人気で民主党苦戦
米議会の現状は、上院(100議席)が民主党53議席、共和党45議席、無所属2議席、下院(435議席)が共和党234議席、民主党199議席、空席2議席だ。
11月4日の中間選挙では、下院全議席、上院36議席、36州の知事のポストが争われる。選挙の争点は、国内経済、ヘルスケア、移民法改革と国内政策が中心だが、中東におけるイスラム過激派勢力の躍進など外交も影を落としている。
民主党が下院で過半数を達成するには、共和党から17議席を奪わなければならない。現状ではこれはまず無理というのが、選挙分析専門家のコンセンサスである。下院選では民主党に不利な条件が重なっている。
米国では10年ごとに実施される国勢調査結果に基づいて、人口の変動に応じて下院選挙区の区割りが改定される(上院選挙区は州全体だから変わらない)。米国の選挙区改変は州単位で実施され、州知事と州議会の判断で選挙区の線引きができる仕組みになっている。とくに選挙区改変で一番力を持つのは州知事だ。自党が強い地域の有権者を弱い地域に分割することにより敵対政党の基盤を弱める「ゲリマンダー」と呼ばれる手法が駆使される。
2010年の中間選挙ではオバマ大統領、とくに医療保険制度改革法(オバマケア)への反発が引き起こしたティーパーティー(茶会)運動が拡大し、多くの州知事選で共和党が勝った。このため、2012年に実施された選挙区改変は共和党有利に進められ、ほとんどの選挙区では現職優位で、激戦になり得る選挙区が大幅に減った。
無党派のクック・ポリティカル・リポートの選挙分析では、どちらにも転び得る激戦区は16区しかなく、このうち民主党現職の州が13州、共和党現職の州はわずか3州だ。共和党が議席を増やすことはあっても、民主党が下院議席を17議席も伸ばす可能性は極めて小さい。
このため、中間選挙の焦点は、上院選挙の帰趨(きすう)に絞られている。共和党が上院で過半数を獲得するには、民主党から6議席を奪ってこなければならない。多くの選挙分析専門家が上院の多数党が民主から共和に移る可能性が五分五分かそれ以上と見ている。
まず改選になる上院議席の21議席は民主党、15は共和党で民主党の方が多い。さらに民主党に不利なのは、オバマ大統領の人気のなさだ。リアル・クリアー・ポリティックスの最近の各種世論調査平均を見ると、オバマ大統領への支持が41・8%、不支持が52・4%と不支持がはるかに多い。このため、接戦州の民主党候補者は、オバマ大統領およびその政策から距離を置き、大統領から極力独力でした選挙キャンペーンを展開しようとしている。
また歴史的に見ても、現職大統領の2期目半ばの中間選挙は大統領の党に不利と相場が決まっている。第2次世界大戦後に2期を務めた大統領は6人いるが、オバマ以前の5人の大統領の2期目の半ばの中間選挙ではいずれも与党が敗北している。それも平均すると、大統領の党が上院で6議席、下院で27議席を失っている。民主党が過去平均の上院6議席を失えば、共和党が上院多数党になる。
2010年の中間選挙では、茶会運動を中心にオバマケアへの反発が強く、民主党支持基盤の独身女性、若者の投票率が落ち込み、民主党は上院で6議席を失い、下院主導権を奪われた。
今年の中間選挙はオバマケアが実施され初めての全国選挙であり、選挙情勢は2010年に似ているといわれる。大方の予測では、民主党現職が再選出馬しないウェストバージニア州、サウスダコタ州、モンタナ州の上院議席を共和党が獲得する可能性が強く、民主党現職が再選を懸けて戦っているノースカロライナ州、ルイジアナ州、アーカンソー州、アラスカ州も接戦模様になっており、共和党の射程圏内に入っている。これらの州を共和党が押さえれば前回中間選挙が行われた2010年の共和党圧勝を再現でき、共和党が議会の両院を制することになろう。そうなると、オバマ大統領の立場はさらに厳しくなり、2016年大統領選挙での民主党の勝算にも影響する。
半面、共和党が現職のケンタッキー州、ジョージア州では民主党挑戦者が接戦に持ち込んでおり、これらの州で民主党が勝てば、共和党の上院主導権奪取は困難になるだろう。