オバマ米大統領、イラク混乱の中でゴルフ

危機意識薄い印象広げる

 イラクがイスラム教スンニ派の過激派武装組織の攻勢で危機に陥る中、オバマ米大統領が先週末、ゴルフに明け暮れていたことに批判が出ている。外交・安全保障問題に対するオバマ氏の関心の薄さを改めて印象付けたことは間違いない。(ワシントン・早川俊行)

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13日、米ワシントンのホワイトハウスでイラク情勢について記者会見するオバマ大統領。この後、カリフォルニア州に移動し、週末をゴルフに費やした(UPI)

 オバマ氏は13日にホワイトハウスで記者会見し、イラク危機への対応策を数日内に決めると述べた後、カリフォルニア州に移動。11月の中間選挙に向けた政治資金集めイベントに出席するためだった。そのまま同州に滞在したオバマ氏は14、15の2日間、超一流ゴルフコースでプレーを満喫した。

 そうした中、イラクでは、スンニ派の過激派「イラク・シリアのイスラム国」が勢力を拡大。緊張激化が続けば、米国がイラク安定のために払った膨大な犠牲が無駄になりかねない危機的状況だ。危機はイラクだけでなく、14日にウクライナ軍の輸送機が親ロシア派武装勢力に撃墜され、兵士ら49人が死亡する事件も発生している。

 オバマ氏は危機対応よりもゴルフを優先した格好だが、ホワイトハウスは「大統領は最新情報を知らせるよう指示していた」と説明、対応に問題はないとの立場だ。

 確かに、安全保障チームが対応策を検討している間に大統領がゴルフに興じたとしても、実務面への影響は軽微かもしれない。だが、危機意識の乏しい大統領との印象を国際社会に与えてしまったことは大きな問題だ。

 政治ニュースサイト、ワシントン・エギザミナーは、ブッシュ前大統領の側近だったカール・ローブ氏のコメントを紹介。欧州訪問から帰国したばかりのローブ氏は、イラク危機の最中にゴルフをしたオバマ氏について、「我々の同盟国は『この男はクビになったのか。大丈夫なのか』と言っている」と、オバマ氏への懸念が広がっていることを明らかにした。

 また、米紙ボストン・ヘラルドのコラムニスト、アドリアーナ・コーエン氏は、オバマ氏のゴルフを「世界は見ている」と断言。プーチン・ロシア大統領らに誤ったシグナルを送ってしまったとの見方を示した。

 オバマ氏は大のゴルフ好きで、就任以来のラウンド数は今回で176回に達した。年平均30回以上もプレーしている。

 大統領が遠出してゴルフをすると、エアフォース・ワンでの移動や警備に多額の費用が掛かる。オバマ政権下で財政赤字が膨れ上がる中、ゴルフを自粛して大統領自ら赤字削減の模範を示すべきだとの声も出ているが、オバマ氏がこれに耳を傾ける気配はない。

 これに対し、ブッシュ前大統領はイラク戦争が始まった2003年にゴルフをやめた。「息子を失った母親たちに最高司令官がゴルフをしている姿を見せたくはない。その家族たちとできる限りの連帯感を持つ義務がある」と考えたためだ。

 一方、ライアン・クロッカー元駐イラク米大使は、CBSテレビのインタビューで、「ケリー国務長官は今すぐバグダッドに飛ぶべきだ。イラクとハイレベル協議を行う必要がある」と主張した。だが、ケリー氏は16日から2日間、国務省で開催された海洋の生態系保全を話し合う国際会議のホスト役を務めた。オバマ氏がゴルフをしていた先週末、ケリー氏はこの会議に参加するハリウッド俳優とツイッターでやりとりしたことも、オバマ政権の危機意識の薄さを示すものとの見方が出ている。