武漢研究所員3人 19年秋に通院治療、新型コロナと関連か


 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は23日、中国の武漢ウイルス研究所(WIV)の研究者3人が2019年11月に体調不良となり、病院で治療を受けていたことがこれまで未公開だった米情報機関の報告書で明らかになったと報じた。新型コロナウイルスとの関連は不明だが、ウイルスが流出した可能性が指摘されるWIVへの調査を求める声が一段と高まりそうだ。

武漢ウイルス研究所(AFP時事)

武漢ウイルス研究所2月3日、中国湖北省武漢市(AFP時事)

 トランプ前政権下の1月に国務省が公表した報告書は、中国・武漢で最初に新型コロナ感染者が見つかったとされる前の19年秋に、WIVで数人の研究者が新型コロナと通常の季節性疾患の両方に一致する症状を示したとしていた。今回の報告書は、研究員の人数や通院していた事実、その時期まで踏み込んだものだという。

 またこれに関連し、トランプ前政権で新型コロナの起源を調査するタスクフォースを率いたデービッド・アッシャー元国務省調査官は3月、米シンクタンクによるオンラインセミナーで、「(WIV研究者の)3人が重い症状で同じ週に入院した」とし、新型コロナが「間違いなく研究所内から広まったように思える」との見解を示していた。

 同紙によると、今回の情報について、米当局者の間で見解が分かれており、ある関係者は重要な証拠になる可能性に言及しつつも、さらなる調査や実証が必要だと指摘。別の関係者は「さまざまな情報源から入手した情報で極めて質が高いものだ。なぜ(研究者が)病気になったのかについては正確には分からない」と述べた。

 世界保健機関(WHO)は3月、新型コロナの起源を調べるために中国に派遣した調査団の報告書で、動物から中間宿主を通じて人に感染したとの仮説が最も有力とし、WIVからの流出説については「極めて可能性が低い」とほぼ否定した。これに対し、日米など14カ国は声明で「調査が大幅に遅れ、完全な元データや検体へのアクセスが欠如していた」とし、追加調査を行うよう求めた。

 今月14日には、著名な生物学者18人がサイエンス誌に書簡を発表し、「十分なデータが得られるまで、自然発生説と研究所流出説の両方を真剣に受け止めるべきだ」と述べ、中国の研究所にデータ公開を求めるなど、さらなる調査を呼び掛けた。

(ワシントン・山崎洋介)