「新疆全体を収容所に」 米国務省、信教の自由年次報告書

中国政府のウイグル弾圧など非難

 米国務省は12日、世界各国の信教の自由に関する年次報告書を発表し、中国政府が新疆ウイグル自治区などでイスラム教徒らの弾圧を続けていると非難。同省高官は、中国政府が「自治区全体を収容所に変えようとしている」と批判した。

12日、ワシントンで記者会見するブリンケン米国務長官(AFP時事)

12日、ワシントンで記者会見するブリンケン米国務長官(AFP時事)

 ブリンケン国務長官は12日の記者会見で「中国は宗教的表現を広く犯罪化し、人道に対する罪を犯し、イスラム教徒のウイグル族らに対してジェノサイドを続けている」と改めて非難した。また、法輪功メンバーを恣意(しい)的に拘束するなど弾圧に関わったとして、中国政府高官とその家族に対し、米国への入国を禁止する制裁措置を発表した。

 国務省で信教の自由に関わる問題を担当するナデル氏は、中国政府は、ウイグル人と共に暮らす番人を配置し、人々の動きを細かく監視させていると指摘。「中国は自治区全体を屋外収容所にしようとしている」と批判した。

 報告書は、新疆ウイグル自治区の収容所などの施設で、100万人以上のウイグル人らイスラム教徒や一部のキリスト教徒を拘留したと指摘。「中国政府の文書、目撃者や被害者の証言は、政府がイスラム教徒の出生率を減らすために強制不妊手術と強制避妊の使用を大幅に増やしたことを示している」と強調した。

 北朝鮮については、「政府は、ほぼすべての宗教活動に従事する個人への処刑、拷問、逮捕、身体的虐待を続けていると伝えられている」と指摘。20万人が刑務所に収容されており、その多くがキリスト教徒であると推定されているとした。

 日本の項目では、広島高等裁判所が昨年11月、世界平和統一家庭連合の信者夫妻が拉致監禁され、脱会を強要されたとしてキリスト教関係者らを訴えた民事裁判の判決を取り上げた。

 同裁判所が、強制的に改宗させる目的で誘拐し監禁したとして5人の不法行為を認定し、夫に約61万円、妻に約110万円の損害賠償を支払うよう命じたことも盛り込んだ。

(ワシントン・山崎洋介)