民主党の「闇」告発、トランプ氏「最も重要な演説」

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 トランプ米大統領は2日にフェイスブックで公開した演説の動画で、大統領選で疑われる広範な不正を放置してはならないと訴えた。大手メディアは演説を「根拠のない主張の繰り返し」(AP通信)と酷評したが、今回の選挙が混乱に陥った要因について核心を突く指摘をしている。それは民主党が新型コロナウイルス対策を「口実」に郵便投票を大幅に拡大させ、さまざまな形態の不正行為を生み出す「下地を作った」ことだ。(編集委員・早川俊行)

権力のために不正助長

 「今までで最も重要な演説かもしれない」。こう切り出して始まった46分に及ぶ演説で、トランプ氏は民主党が郵便投票の拡大を推し進めたのは「大統領選を盗みたかったからだ」と断言。「彼らは権力を取り戻すためなら何でもする」と、民主党の“闇”を告発した。

2日、フェイスブックで公開した演説の動画で、大統領選で広範な不正があったと主張したトランプ米大統領(UPI)

2日、フェイスブックで公開した演説の動画で、大統領選で広範な不正があったと主張したトランプ米大統領(UPI)

 政権奪還を目指す民主党が郵便投票の拡大を最優先課題に位置付けていたことは、紛れもない事実だ。トランプ氏も言及したが、2018年の中間選挙で下院を奪還した民主党が最初に提出したのが選挙改革法案だった。法案はすべての人に郵便投票を認めるほか、有権者に身分証明書の提示を求めないなど、不正を助長する施策のオンパレードだった。

 民主党は法案を「国民のための法案」と名付け、まるで国民の選挙権を守ることが目的であるかのような印象操作を図ったが、実態は「民主党に有利なように選挙制度を不正操作する」(保守系シンクタンク・ヘリテージ財団)ことが狙いだった。

 上院で過半数を握る共和党が猛反対していたため、法案が成立する見通しは全く無かった。ところが、民主党にとって好都合なことに、法案を成立させる必要がなくなる。新型コロナが大流行したことで、感染防止を理由に各州で郵便投票を大幅に拡大することが可能になったからだ。

 郵便投票を拡大させるなら不正防止策を強化しなければならないが、民主党は逆に本人確認に欠かせない署名の照合をやめさせるなど不正防止策を骨抜きにするルール変更を各地で推し進めていった。そんな民主党をトランプ氏は「公正な選挙を求める人々の行動ではない。選挙を盗もうとする、不正を生み出そうとする人々の行動だ」と痛烈に非難したが、民主党の一連の動きを見れば、そう判断せざるを得ないだろう。

 トランプ氏の演説でもう一つ注目すべきは、選挙の不正操作を図った勢力は、ロシア疑惑などでトランプ氏を追い詰めようとしたとした勢力と同一であると断じたことだ。トランプ氏は具体的な名前を挙げなかったものの、民主党の選挙弁護士マーク・エリアス氏は間違いなくその中の一人だろう。

 エリアス氏は2008年にミネソタ州で行われた上院選の結果を法廷闘争で民主党候補の勝利にひっくり返した豪腕弁護士で、今回の大統領選では選挙ルールの変更を求める訴訟を各地で繰り広げ、不正の温床を拡大させた中心人物だ。実はこのエリアス氏こそ、ロシア疑惑をでっち上げた張本人なのだ。

 ロシア疑惑は英国の元諜報(ちょうほう)員クリストファー・スティール氏が作成した根拠のない「スティール文書」が発端だが、スティール氏に委託した「フュージョンGPS」という調査会社を雇ったのが、16年大統領選当時、クリントン陣営と民主党全国委員会の法律顧問を務めていたエリアス氏だった。

 「途方もなくひどい不正を根絶できなければ、米国はもはや国家ではない」

 トランプ氏はこう主張し、演説を締めくくった。実際に起きた不正の規模は定かでないが、不正を放置すれば、米国の民主主義に深刻な禍根を残すことだけは間違いない。

トランプ氏が挙げた不正疑惑の事例

 トランプ米大統領が2日にフェイスブックで公開した演説で挙げた大統領選不正疑惑の主な事例は以下の通り。
 ▼有権者登録名簿には故人や州外への転居者、さらには外国人まで、投票資格のない人が数多く含まれている。ミシガン州の67郡を含む接戦州の何十もの郡で、有権者登録数が有権者人口を上回っている。ウィスコンシン州選挙管理委員会は、居住を確認できなかった10万人以上を選挙前に名簿から削除することを繰り返し拒否した。

 ▼投票日夜の時点ではウィスコンシン州でトランプ氏が大きくリードしていた。ところが、翌日午前3時42分に大量の票がほぼすべてバイデン氏に行った。ミシガン州でも午前6時31分に14万9772票が突然やって来た。

 ▼ドミニオン社の集計システムを使ったミシガン州のある郡では、約6000票がトランプ氏からバイデン氏に不正に切り替わった。これは氷山の一角だ。同社は政治献金の96%を民主党にしている。

 ▼ペンシルベニア州ファイエット郡では、複数の有権者が既に記入済みの投票用紙を受け取った。モンゴメリー郡では、登録を済ませていない有権者が後で戻ってきて別の名前で投票するよう言われた。

 ▼ミシガン州デトロイトのキャリア職員は、市職員と共に有権者に民主党に投票するよう指導し、彼らが誰に投票しているか監視した。同じ職員たちは、ID提示を求めることや署名確認を行わないよう指示された。

 ▼デトロイトでは、選挙当局者が同じ投票用紙の束を何度も数えたり、不法に投票用紙を複製したことが目撃されている。また適切に登録された有権者のものではない無数の投票用紙を違法にカウントするために、ウェイン郡の選挙職員が偽の生年月日を入力していたことも目撃されている。選挙当局が最後の不在者投票を受け取ったと発表した後に、何万もの投票用紙が到着し、その多くは封筒もなく、全て民主党票だったという証言もある。

 ▼ジョージア州では、折り目や典型的なマーキングがなく、規定の封筒で届いたものではないことを示す不規則な投票用紙が無数に目撃されている。フルトン郡では、異常なほどきれいな大量の投票用紙の98%がバイデン票だったと推定されている。フロイド、ファイエット、ウォルトン郡では選挙の数週間後に、数千もの未集計の投票用紙が見つかったが、その多くがトランプ票だった。

 ▼ネバダ州クラーク郡では、署名を照合する機械の基準が意図的に引き下げられ、大量の投票用紙がカウントされた。サンタクロースと署名しても受け入れられるという報告もある。

 ▼広範な不正を示す最も重要な兆候の一つは、多くの重要州で郵便投票の却下率が異常に低かったことだ。ジョージア州では、却下された郵便投票はわずか0・2%だった。6・4%だった2016年と比べると、実質的に全く却下されなかった。ペンシルベニア、ネバダ、ミシガン州でも同じように低下した。これらの不規則なことは、不適格な投票や不正投票を受け入れる意図的な試みがない限り、説明できない。

 ▼ペンシルベニア州では、州務長官と州最高裁が州法に違反し、選挙のわずか数週間前に、署名確認義務を事実上撤廃した。