本性は共産主義者、民主党サンダース氏
米大統領選の民主党候補指名獲得レースで、「民主社会主義者」を名乗る急進左派のバーニー・サンダース上院議員(78)が首位を争っている。サンダース氏はかつて、ソ連やキューバなど共産党一党独裁体制を礼賛し、国内でも過激な極左マルクス主義政党を支援していた。トランプ大統領がサンダース氏を「共産主義者」と呼んで物議を醸したが、同氏の経歴を見れば、トランプ氏の指摘は正しいといえるだろう。(編集委員・早川俊行)
ソ連・キューバ礼賛
国内でも革命政党支援
「私が目指すのはベネズエラやキューバではない。デンマークやスウェーデンのような国々だ」
サンダース氏は社会主義への警戒感を和らげるため、目指す目標は北欧型の福祉国家だとたびたび強調している。だが、サンダース氏の過去の政治活動や言動を見ると、同氏が理想としていたのは決して北欧諸国ではない。ソ連やキューバといった共産主義国だ。
冷戦時代の1988年、当時、バーモント州バーリントン市長だったサンダース氏は、再婚したばかりの妻とソ連にハネムーンに行っている。ワシントン・ポスト紙が取材した同行者の証言によると、サンダース氏はソ連を称賛し、米国を非難する主張を繰り広げたという。帰国後の記者会見でも、ソ連の住宅、医療保険制度は米国より優れていると高く評価した。
サンダース氏は89年にキューバを訪問する。念願だったフィデル・カストロ議長との面会は実現しなかったが、帰国後の声明で「キューバ革命は私の理解よりはるかに深遠だった」と、共産主義革命を称賛。キューバの独裁体制に対する批判については、右翼勢力のプロパガンダだと切り捨てたのだ。
86年には、60年の大統領選テレビ討論会で民主党候補のジョン・F・ケネディ氏がカストロ議長に強硬姿勢を取るべきだと主張するのを見て、「吐き気を催した」とまで述べている。
サンダース氏は国内の共産主義政党とも緊密な関係を持っていた。保守系ニュースサイト、ワシントン・エグザミナーの調査報道によると、サンダース氏は80年と84年の大統領選で「社会主義労働者党(SWP)」を支援。SWPは、38年に国際共産主義組織「第四インターナショナル」を設立し、世界革命を目指したレフ・トロツキーの信奉者によって設立された。
SWPの大統領候補は、ソ連やキューバを称賛する一方、米軍廃止や民間産業国有化などを主張。サンダース氏は市長の立場で、こうした過激な候補の応援演説などを行っていた。同氏が党員だった証拠は見つかっていないが、危険な革命政党とのつながりから連邦捜査局(FBI)の捜査対象になったことがある。
サンダース氏は91年から下院議員、2007年から上院議員を務めているが、国政に出てからも過去の言動を撤回、または考えを改めた形跡は見られない。11年には、当時のチャベス大統領が独裁体制を築いたベネズエラなどを挙げて、「南米でアメリカン・ドリームが実現している」と発言。サンダース氏の考え方は冷戦時代と変わっていないとみるべきだろう。
トランプ氏は今月2日、FOXニュースのインタビューで「サンダース氏は共産主義者だと思う」と述べ、波紋を広げた。反トランプの大手メディアからは「サンダース氏は民主社会主義者であって、共産主義者ではない」(ニューズウィーク誌電子版)との反論が出た。
だが、ワシントン・エグザミナーによれば、サンダース氏は1972年に「共産主義者と呼ばれても気にしない」と発言している。こうした過去の言動を踏まえ、保守派からはトランプ氏の指摘は正しいとの見方が上がっている。