エジプト外交 初の原発をロシアが受注へ

欧米から露中寄りに変化か

 エジプトのシシ大統領は8月下旬、アブドラ・ヨルダン国王らとともにロシアを訪問、同月26日にはプーチン・ロシア大統領と会談した。5月にはモスクワ対独戦勝70周年記念パレードに参加している。シシ氏の大統領就任後のロシア訪問はこれで3度目。副首相兼国防相時代を含めると4回になる。また、8月30日からシンガポール、中国、インドネシアを訪問、中国では9月3日の「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70年」の記念式典と軍事パレードに参加した。過去、親米だったエジプト外交が、親ロシア・中国外交に傾斜していくのか、単なるバランス外交なのか。(カイロ・鈴木眞吉)

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8月6日、スエズ運河を船から眺めるエジプトのシシ大統領(EPA時事)

 シシ氏が公人としてロシアを初訪問したのは、第1副首相兼国防相時代の2014年2月で、プーチン大統領と会談し、20億㌦相当の兵器購入を決定した。その資金はサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が融資したとされる。

 大統領としてロシアを初訪問したのは同年8月で、12日にプーチン大統領と避暑地ソチで会談、両国は軍事技術分野での協力の拡大に合意した。プーチン大統領は、「現在、ロシアとエジプトの軍事技術協力は大きく発展している」と強調した。

 プーチン大統領は2月、10年ぶりにエジプトを訪問、シシ大統領と会談して、ユーラシア連合(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア)へのエジプトの参加も確約させた。エジプトの戦略アナリストによると、その地ならしとなったのが、2013年11月のラブロフ・ロシア外相とジョイグ国防相のエジプト訪問。エジプトの外相・国防相と4者会談を持ち、「ロシアから軍事支援を受けたければ、米国との同盟関係を脇に置くよう」語ったとされる。

 8月の訪問では、ロシアがエジプト初の原発を建設することを確認、両首脳は共同記者会見で、その計画が間もなく最終合意に至ると発表した。地中海沿岸の都市ダバに建設予定の原子炉4基のうち2基の建設について言及したもの。ロシアは残る2基の受注も目指しているという。

 ロシアは、長年イランでの原発建設に携わってきたが、エジプトのほかにヨルダンやサウジからの受注も望んでいる。シシ大統領と共に訪露したアブドラ国王はプーチン大統領との会談で、原発建設について協議したもようだ。

 このようなロシアの中東への積極的進出政策は、オバマ米政権による「アラブの春」以降の中東政策の失敗により、米国を今後とても頼れないとの認識に至った中東各国に付け込むと同時に、ウクライナ問題発生以降、欧米との関係悪化による欧州市場からの締め出しに対応する必要性からもたらされている。

 エジプトのシンクタンク、アルアハラム財団のモハメド・ファイエズ・ファラハト事務局長は、本紙とのインタビューで、「エジプトは(欧米との関係が深く)欧米から離れ東方に向かおうとしていない」と語った。ただ、「エジプト指導部は、経済的にも政治的にも台頭するアジアを無視できない段階に来ており、多角的な外交を展開する必要性に迫られている」との見方を示した。