イスラム指導者の役割強調 過激主義との戦いでシシエジプト大統領
法令発令者が初の国際会議
【カイロ鈴木眞吉】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」などによる陰惨なテロが全世界規模でその激しさを増す中、イスラム教の聖典コーランや、預言者ムハンマドの言行録「ハディース」から導き出されるイスラム法に基づいて、現場での具体的な法令を発する責任者らの初の国際会議が17、18の両日、エジプトの首都カイロで、約50カ国の代表を集め開催された。
エジプト紙エジプシャン・ガゼットによると、「ファトワ(イスラム法令)-最近の現実と未来の展望」と題した同会議に出席したエジプトのシシ大統領は、「イスラムのイメージが、増大する宗教(イスラム教を指す)の名による暴力行為や殺人によってゆがめられている」と指摘。「ここに参加しているイスラム学者や指導者に大きな責任がある」として、ファトワを発する資格を有するイスラム指導者が、「穏健で忍耐に満ちた宗教の価値を反映する大使として重要な役割を果たすよう」促した。
シシ大統領はさらに、「過激主義者とテロリストの思想の危険性を防ぐため、早急で重要な行動は、イスラム社会にそれが広がる前にしなければならない」とも主張、「このことは、宗教の真の利益に完全に貢献するものになるはずだ」として、その意義を強調した。
シシ大統領は「イスラム教教義の中に暴力を肯定する部分がある」と指摘、昨年から今年にかけて、エジプトの宗教財産省やイスラム教スンニ派総本山「アズハル」の指導者らに、「暴力表現を除去する、イスラム教内宗教改革の断行」を求めてきた。
大統領の要請に応じ、アズハルは昨年12月、「アズハル国際会議」をカイロで開催、アズハルの教育責任を認めて「青少年に正しい聖戦概念を教育する」などを決議、対応を強化してきた。アズハルはさらに、モスクや、モスク以外の集会場で説教する説教師から、(イスラム過激派の温床とみなされている)ムスリム同胞団系や過激思想の持ち主を除外するなどの改革を進めてきた。
今回の会議では、ファトワの統一性を打ち出し、アズハルの方針に沿わないファトワの発出を禁じた。
シシ大統領は、「(イスラム)学者は、宗教と信仰の柱を変えることなしに、コーランとスンナ(ハディースを含むムハンマドの言行と範例)に沿ってイスラム教徒に事実を説明する重要な役割を持っている」と結んだ。
イスラム教内宗教改革が軌道に乗り、イスラム教徒が再教育を受け、テロの絶滅に至るかどうか、今後の改革の行方が注目される。