“ツートラック戦略”に影を落とす歴史問題


韓国紙セゲイルボ

 文在寅大統領は対日外交で歴史問題と未来指向的な協力を分離して対応する“ツートラック戦略”を標榜(ひょうぼう)しているが、過去の歴史と関連したさまざまな懸案が韓日両国の対立要因として作用している。

 代表的な事例は慰安婦問題だ。文大統領は就任後の2017年5月、安倍首相との初めての電話通話で「韓国民の大多数が情緒的に慰安婦合意を受け入れられないのが現実」と指摘。朴槿恵政府の「韓日政府間慰安婦合意」に対する否定的な見解を伝えたのだ。

 同年7月、韓国政府は慰安婦合意に対するタスクフォースを組み、「慰安婦合意に欠陥があった」という最終的な結論を出した。これに日本側は「政府間の約束は政権が変わっても守られなければならない」として、「国際社会で韓国政府の信用が落ちるだろう」と反発した。

 昨年11月には韓国政府が「慰安婦合意」で設立された「和解癒やし財団」を解散すると発表。同財団は日本が出資した10億円で慰安婦被害者とその遺族に対する癒やし金支給事業を行い、当時の生存被害者34人と死亡者58人の遺族に全44億ウォンが支給された。

 だが、和解癒やし財団の設立と共に合意の核心だった「日本首相の誠意ある謝罪」は実行されなかった。

 韓国大法院(最高裁)が昨年10月、新日鉄住金に対し強制徴用被害者に1億ウォンずつ賠償せよと判決したのも韓日両国の葛藤を拡大させた。文在寅政府は「司法府の判断は尊重しなければならない」として政府とは関係がないという立場だが、安倍政権は韓国政府が影響力を及ぼした判決だと疑っている。

(ウ・サンギュ記者、1月7日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。