韓国・文政権 基盤に脆さ
滞る北非核化、経済失政
保守再起のチャンスも
韓国の文在寅政権を支える政策的柱が揺らいでいる。高支持率を牽引(けんいん)してきた南北融和は肝心の北朝鮮非核化で進展が見えず、景気対策も失政が指摘され民心離反が起こりかねない状況だ。政権交代時に壊滅的な打撃を受けた保守派に再起のチャンスが訪れる可能性が出てきそうだ。
(ソウル・上田勇実、写真も)
一昨年、国政介入事件に憤った市民らがソウル中心街で朴槿恵大統領(当時)の退陣を求め大規模デモを行ってから丸2年を記念するろうそく集会が27日、左派系団体が主催し行われた。
「ろうそくの力で誕生したと自認する新政権もわれわれに失望を抱かせている」
こう不満を口にした主催者はその理由として財閥解体や不動産価格の抑制、朝鮮半島の平和定着などで文政権が「期待を裏切り右傾化している」ことを挙げた。反米や反財閥などイデオロギー色が濃い強硬左派にとって文政権の政策は米国や財閥への配慮があり、「生ぬるい」と映っているようだ。
一方、中間層の民心離れも起きている。所得主導の景気回復を目指し夏に発表した最低賃金引上げ策が人件費上昇を嫌った経営者によるアルバイト解雇などの雇用不安となって跳ね返る逆効果を生んだのに続き、このほど政府が発表した約6万人分のバイト雇用創出策にも早くも批判が噴出するなど、経済失政が目立ってきたためだ。
この雇用創出策は、例えば政府系企業で職場体験(インターン)だけすれば1カ月150万ウォン(約15万円)が税金から支給されるなど実質的な仕事のない就業者数を増やすための「見せ掛けの数字合わせ」(韓国メディア)が大部分だ。
さらに統計庁発表によれば、求職期間半年以上の失業者数(今年1~9月の平均)は15万2000人で同期では2000年以降最悪の水準となった。
当選から1年半近くが経過した文政権の最大の実績と言えば、核・ミサイルの脅威で韓国をはじめ周辺国に「戦争への恐怖心」を植え付けていた北朝鮮が「融和」路線に転換するよう南北関係改善に歩調を合わせたことだろう。
ただ、これも肝心の北朝鮮非核化の行方が全く見通せていないのが実情で「融和ムードに酔いしれていた国民が正気を取り戻す」(北朝鮮問題専門家)のも時間の問題になりつつある。またトランプ米大統領が来月の米中間選挙の結果次第では米朝融和に政治的メリットを感じなくなり、再び対北強硬姿勢に転じれば韓国の米朝仲介役は失敗に帰すことになる。そうなれば今年、3回にわたって行われた南北首脳会談の意義と価値が揺らぎかねない。
経済や北朝鮮などの問題に加え、閣僚の道徳性が批判され始めており、朴前政権の「非道徳性」を非難してきた文政権としては「結局は保守も革新も同じか」という落胆を国民に抱かせかねない。
世論調査機関の韓国ギャラップによる先週の調査では、文政権の支持率は2週連続下落して58%だった。別の調査でも60%を割っている。かつては国政介入事件の反動で70%台、80%台という超高支持率が続いたが、今はそうした一種のアドバンテージもなくなり、文政権の国政運営をより客観的に評価できる時期に入ったと言える。
内外情勢の変化に最も神経を尖らせているのが青瓦台(大統領府)とみられる。ある大手シンクタンク幹部は「今はまだある程度の支持率を維持していても、不透明な北非核化の行方や経済低迷などでいつ民心が離反するか不安を抱えているはず」と指摘する。
保守系大手紙・朝鮮日報は看板コラムで「平和を名分に軍事力を弱め、米国との疎遠を甘受しながら北朝鮮と手を結び、経済面では成長を捨てて福祉と分配の路線を固守する文政権に歯止めを掛けるには(保守系)野党が重大な資産になる」と指摘。「反文在寅戦線」を築くよう呼び掛けた。