北の非核化、また膠着状態入りか
南北関係改善も進度調整を
歴史的なシンガポール朝米首脳会談が開催されてから2カ月経(た)つが、北朝鮮の非核化交渉は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。朝米間の非核化をめぐる異見が相変わらず大きいのだ。
北朝鮮の李英浩外相が先頃行われたASEAN地域フォーラム(ARF)外相会談で投じたメッセージは明確だった。李外相は米国に対して、朝米共同宣言の段階的同時履行を要求し、北だけが一方的に先に動くことは絶対無いということを示した。
北朝鮮は制裁の維持と終戦宣言交渉が進まないことに不満を表し、米国は国際社会に対北制裁をより一層厳格に施行することを要求した。首脳会談当時の非核化への期待度からすれば、現在の状況が方向を失っていることは明らかだ。
シンガポール朝米首脳会談は歴史的な会談であり、北の非核化と韓半島の恒久的平和のための第一歩を踏み出したという点で意味は非常に大きい。しかし「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)概念に朝米両国がどれくらい合意したかを見れば、原則的な水準にとどまった。特に非核化の工程表、非核化の細部に対する言及が全くなく、現在までの進展状況も非常に残念だ。
北朝鮮に対する体制安全保証の内容もはっきりしない。北は一貫して核開発の理由は米国の対北敵視政策のためだと主張する。だから北が核を諦めるには、米国が敵視政策を放棄しなければならないと主張してきた。現在としては朝米間でこれらがどのように議論されているのか不明だ。
想像できる最悪の状況は北朝鮮が経済制裁解除だけを受けて協議を引き伸ばし、パキスタンのように事実上の核保有国の地位を認められることになる場合だ。北は実利を得る一方で、韓国は相変らず北核の威嚇の下で暮らすことになるだろう。
韓国はこれから展開する3次元の複合ゲームをこなさなければならない。まず、南北次元では南北関係の改善、10・4宣言(2007年盧武鉉・金正日会談)の履行、鉄道・道路の連結、平和体制など南北間に検討可能な問題の議論だ。
次に朝米次元では、CVIDと「不可逆的な体制保証」(CVIG)を対等交換する公式を探るのが最大のカギだ。さらに南北米中など3者あるいは4者での終戦宣言問題を議論する。第3の次元は北朝鮮と国際社会の関係だ。
非核化交渉と韓半島の平和体制を成功させようとするなら、この三つの次元が同じ水準で進められなければならない。この進度を合わせる基準は実質的な非核化の進度だ。韓国が非核化の進度より南北関係の改善を急げば、願わないシナリオに出合う可能性が大きくなる。
(李相賢世宗研究所首席研究委員、8月8日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。