交渉カードとしての戦術核再配備
北核解決に中露を動かせるか
ソウルとワシントンで北朝鮮の核・ミサイルへの対応案として、韓国への“戦術核再配備”が議論され始めた。韓国内でも野党政治家や専門家が、米国でも与党関係者が戦術核再配備の必要性を肯定的に考えている空気が次第に醸成されつつある。
1958年から韓半島に戦術核が配備され、91年にブッシュ政府が韓半島から戦術核を撤収する時まで、戦術核は北朝鮮の再侵入を抑制する核心資産だった。
戦術核は北朝鮮南侵への対応策であり、ソ連(当時)と中国を牽制(けんせい)して、覇権体制を安定的に維持し、同盟国日本の核武装をも阻止するための核戦略の一環だった。
米国が戦術核配備を考慮することになるならば、これは北核解決のための解決法だけでなく、今後の米中覇権競争、米露核平衡維持など、全般的核戦略の次元で推進されるために簡単に決定される懸案ではない。
ただし米政府が北核解決のために中国、ロシアを圧迫するカードとして活用しようとすれば、状況は変わってくる。サード(高高度防衛ミサイル)導入に敏感に反応した中国が戦術核再配備を決して歓迎するはずがない。
北核が解決される時には、戦術核再配備を撤回するという条件を出す場合、中国が米国と歩調を合わせて、北核解決に積極的に取り組むかもしれない。
再配備問題でより敏感なのは韓国政府だ。再配備するには相当な費用が必要となるし、韓中、韓露関係が行き詰まるのは火を見るよりも明らかだ。
さらに北朝鮮の攻撃から戦術核を防御するために、サード体系よりさらに洗練されたミサイル防御網を構築しなければならず、そうするために韓国は米国のミサイル防御体制に編入されなければならないかもしれない。戦術核の運用計画などに韓国軍が効率的に参加するために、戦時作戦統制権移管の時期をさらに遅らせなければならないかもしれない。
このような国内政治的費用の負担に現政権が耐えられるか疑問だ。戦術核再配備に対する反対論理の核心は韓半島非核化宣言の自動廃棄であった。
だが、韓半島で北朝鮮の核独占時代が始まった以上、韓半島非核化は水泡に帰した。韓米同盟が戦術核再配備案に合意して、中国とロシアに北核解決法を自ら模索させるように誘引するのも必要だ。
次元が変わった韓半島非核化をまた原点に戻しておくためにも、条件付き戦術核再配備案に対する前向き見解が必要な時である。
(金宇祥(キムウサン)延世大教授・元駐豪州大使、10月30日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。