北朝鮮の電磁パルス攻撃能力 、人工衛星に搭載の可能性も

ビル・ガーツ

 北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は4日、「核兵器のEMP能力」と題する記事を掲載、核兵器を対地攻撃以外に、宇宙からの電磁パルス(EMP)攻撃に使用する計画を明らかにした。北朝鮮がEMP攻撃に言及するのは初めて。

 記事を書いたのは、平壌の金策工科大学のキム・ソンウォン学部長。「通常、地上30㌔から100㌔で核爆発を起こすと強力な電磁パルスが発生し、電子機器、送電網に大きな損傷を与える」と指摘している。

 北朝鮮がEMPの使用計画に公式に言及したことで今後、その脅威をめぐる議論が高まる可能性がある。ウールジー元中央情報局(CIA)長官は、北朝鮮が人工衛星にEMP兵器を搭載する能力を持っていると主張してきた。

 北朝鮮は、3日に行った地下核実験は水爆実験だったと主張しており、米情報機関が分析を進めている。米政府高官らによると、爆発の規模は過去最大だ。

 記事は「わが国の水素爆弾は、攻撃の標的によってその威力を数十㌔㌧から数百㌔㌧まで調整できる多機能熱核弾頭であり、巨大な破壊力を持つだけでなく、戦略的目標上の高高度で爆発させることで、広い範囲にEMP攻撃を加えることもできる」と主張している。

 EMPは、1960年代に米軍が太平洋上空で核実験を行った際に発見された。核実験で発生したEMPによって、爆心から半径1600㌔以内にある電子機器が破壊されたことが明らかになっている。

 CIAの元アナリスト、ピーター・プライ氏は、連邦議会のEMP攻撃脅威評価委員会が北朝鮮のEMPの脅威について長年、警告を発してきたと指摘、「EMP攻撃は、全米の送電網など、国民の生活を支える重要インフラを破壊することで、都市を核爆発で破壊するよりも多くの人命を奪う可能性がある」と主張している。

 プライ氏によるとEMP委員会は、EMP攻撃によって全米が停電し、それに伴って生じる食糧不足、病気、社会的混乱で人口の9割が死亡する可能性があると指摘。「北朝鮮はこのことを知っている。だから、国営メディアで、新型核弾頭で都市への攻撃とEMP攻撃の両方が実行できると主張した」と強調した。

 プライ氏によると、EMPの脅威が高まっているにもかかわらず、EMP委員会は設立許可が更新されなければ、9月20日に廃止されるという。同委はEMPに関する豊富な知見を有しているにもかかわらず、「国防総省、国土安全保障省の誰も、委員会の存続を求めていない」という。

 ジェームス・ウールジーCIA元長官は、北朝鮮は人工衛星にEMP兵器を搭載しかねないと指摘している。

 ジョージタウン大学安全保障研究センター副所長で北朝鮮専門家のデビッド・S・マクスウェル氏は、地下実験はEMP爆弾の実験には有効ではないと考えると語った。

 同氏は「地下や地上での爆発ではEMPの効果は弱まるが、核爆発では必ずEMPが発生すると私は理解している」と述べるとともに、欧州での軍事演習中は、アンテナを外し、電子機器の電源を切って、ソ連の核攻撃に備えていたことを明らかにした。