朝鮮史に見る「根拠ない自信」


韓国紙セゲイルボ

中国のくさび戦略 深刻に

 率直に言って、歴史ドラマ『懲泌録』は気に入らない。劇的面白みのことではない。歴史を扱ったものなら、正直であるべきだが、そうではないからだ。

 壬辰倭乱(文禄・慶長の役、1592~98年)は朝鮮の恥辱だ。ドラマの主人公・当時の大臣柳成龍(ユソンニョン)をまたとない「憂国の志」とだけ描こうとするのには無理がある。また、豊臣秀吉を異常者とだけ描くのもやめてほしい。

 それでも『懲泌録』を見てしまうのには理由がある。時々だが歴史に直面できるからだ。当時、財政状況が悪化したため、祝聖(しゅくしん)(王の誕生祝)ができない状況になった。だが、方法がなくはない。私腹を肥やす貴族に倹約を命じ、課税すればよかっただけだ。

 戦争は時々刻々近づいている。だが民の血と肉で肥え太った朝廷の大臣らは民の安全と危機よりも、自分の身の回りのことに忙しい。

 そうしながら、「日本が侵入すれば一発で撃退できる」「豊臣はサルのようなもので、指導者らしからぬ」などと大言壮語して虚勢を張っていた。結果はどうだったか。哀れなもので、その被害はいつも民が被った。

 皆が知っている話だが、朝鮮の歴史で高位官僚らの「根拠ない自信」は常に国を誤らせた。壬辰倭乱をはじめ、丙子胡乱(清の侵入、1636~37年)、旧韓末の亡国(日韓併合、1910年)、韓国動乱(1950~53年)など、皆が「大丈夫だ」と言いながら、「あれよ、あれよ」という間に戦争となり、大きな被害を被った。

 「時間は味方」という言葉は安保辞典から消さなければならない。何も行動しない楽天主義はさらに一層警戒すべきものだ。

 最近、中国がサード(THAAD=終末高高度防衛)ミサイルについて露骨に韓国を圧迫している。国民的な侮辱感を感じるほどだ。

 韓国、米国、日本を分離させようとする中国のくさび戦略はより深刻になるだろう。韓国外交が王手を食らって詰む流れに向かっている。

 尹炳世(ユンビョンセ)外相がメディアのインタビューで言い返していた。「敗北主義と事大主義に陥ってはならない」と。韓国が中国の顔色をうかがい、米国の言葉に従う時代ではないということだ。果たしてそうだろうか。尹外相の言葉が根拠のない自信でないことを祈るだけだ。

(白永喆〈ペクヨンチョル〉論説委員、3月19日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。