与党有力候補は「左翼革命家」―韓国大統領選
保守派危惧、親日狩りも カリスマ性あり高い人気
日韓関係は不透明
来年3月の韓国大統領選に向け、与党「共に民主党」の公認候補を決める予備選に出馬中の李在明・京畿道知事について、保守派が危惧を抱いている。特に問題視しているのは、「既得権層から富や権力を奪い返す」という左翼革命家の一面だ。ただ、そのカリスマ性から人気は高く、最終的に同党候補になる公算が強まっている。
「恨みが強い人。貧しい家庭に生まれ、母親は市場にある公衆トイレの入口に座って利用者から小銭をもらい、生活を支えたくらい。社会に対する復讐心を強く持っている人だ」
李氏の生い立ちについて、ある政府系シンクタンクの関係者はこう述べた。
小学校を卒業後、地元の工場で少年工として働き始めたが、日常的に上司たちのパワハラに苦しめられたという。1980年、南西部の光州市で当時の軍事政権に反対する大学生や市民らが政府軍と衝突して死傷者が出た光州事件を後に知り、「光州(事件)は私にとって救世主、師匠であり、私の社会意識の根っこ。私を変えた」(韓国本『李在明、やると言ったらやる』から)と思うようになるほど感化された。
李氏が、韓国の左派陣営が反既得権闘争の聖地と見なす光州に決定的影響を受け、人生の目標を設定したことをうかがわせる。
李氏は中卒と高卒の認定試験に合格して大学を受験し、有名大学に入学。司法試験にパスして人権派弁護士となった後、城南市(京畿道)の市長を経て現職に。行政で辣腕を振るい、「実行力のある人」というイメージが広がった。前回の大統領選では与党の公認候補選びで負けたが、テレビ出演などを通じ庶民派をアピールし、今回再チャレンジした。
保守派は李氏の思想信条に疑問を抱いている。保守系政権時に政府高官を務めたある識者はこう指摘する。
「骨の髄まで革命家だ。共産革命をしようとしている。金持ちから奪い取って皆に配分するという発想で、ボリシェヴィキ思想と似ている」
李氏は看板政策として「基本所得、基本融資、基本住宅」を掲げているが、いずれも共産主義的発想からアプローチされていることが分かる。このうち基本所得(ベーシックインカム)は、勝ち組の大企業と負け組の中小企業・自営業の格差が広がる中、最終的には全世帯に毎月50万ウォン(約4万5000円)程度の現金を支給しようというもので、特に庶民の購買力を高めるため、高所得層に増税を課そうとしている。
多くの識者は、仮に李氏が大統領に当選した場合、外交安保政策は文在寅政権の路線を踏襲すると予想している。李氏自身は、かつて北朝鮮の主体思想に心酔した、いわゆる「主思派」ではないが、すでにブレーンとなっている学者や支援する政治家には「主思派」が多く、「革命家の一面があるため、さらに果敢な親北政策に傾く」(前出の識者)可能性もある。
戦後最悪と言われるまで悪化した日韓関係も、双方とも首脳が交代することで期待が寄せられているが、見通しは不透明だ。
李氏の政策諮問団のあるメンバーは「李氏の過去の発言から反日だと過度に認識され、当選したら韓日関係がさらに悪化すると報道されているが、李氏は現実主義者であり、関係改善の意志は強い」と述べた。
ただ、李氏はポピュリスト(大衆迎合主義者)として知られ、国内の政治基盤固めにしばしば左派が使ってきた「親日派狩り」が再び行われる可能性は十分ある。懸案となっている慰安婦・徴用工問題で、韓国受けする政策しか取らないことも考えられよう。
過激な発言や女優とのスキャンダルなど、さまざまな欠点を抱えながらも李氏の人気は高い。保守系野党「国民の力」のある議員(ソウル市選出)は「過半数の国民は政権交代を願っているが、仮に李氏が与党公認になった場合、われわれの公認が誰になるか次第では、李氏に負けるだろう」と漏らした。