パリ同時多発テロ 警戒の中、裁判開始


アブデスラム被告(AFP時事)

 2015年11月13日に発生した史上最大規模のテロ事件となったパリの同時多発テロ事件の裁判が8日、パリ中心部シテ島にある重罪院特別法廷で始まった。公判中にテロが起きる可能性も排除できないとして、ダルマナン仏内相はパリ首都圏だけでなく、全国の警察に高レベルの警戒を指示した。当時のテロ実行犯の生き残りは1人だけで、残りはテロほう助罪で収監されている被告を裁く裁判だ。

 昨年9月には2015年1月に起きた風刺週刊紙シャルリエブド本社編集部襲撃テロの裁判が行われている期間の9月、10月に襲撃テロが発生したこともあり、テロを支持するイスラム聖戦主義者によるテロが実行される可能性が高いと治安当局は見ている。そのため今回は、裁判所にも1000人の警官が配備され、警戒に当たっている。

 同テロは、オランド仏大統領(当時)とシュタインマイヤー独大統領がサッカーの試合を観戦していたパリ北郊外の国立競技場スタッド・ド・フランスの外で3人の自爆犯による自爆テロが起き、続いてパリ市内北部のカフェやレストランで銃の乱射や爆弾テロが起きた。そして、パリ11区のコンサート中のバタクラン劇場に乱入したテロリストが銃撃と爆発を起こし、130人が死亡、300人以上が重軽傷を負う史上最大規模のテロの惨事となった。1時間弱の出来事だった。

 主犯格のモロッコ系ベルギー人のアブデルハミド・アバウド容疑者は事件後、隠れ家で発見され、治安部隊との銃撃戦で仲間ともに死亡した。アバウド容疑者はシリアにいたこともあり、過激派組織イスラム国(IS)の戦闘員としての経験もあり、ベルギー、フランスでのテロリストのリクルートにも関わっていた。

 今回の裁判では、テロ実行犯で唯一の生き残りのサラ・アブデスラム被告(31)を中心に他の19人の被告と共に裁判が行われる。2016年3月に身柄を拘束されたアブデスラム被告は終始沈黙を続け、今回の裁判で沈黙を破って新事実が出てくるかどうかが注目される。

(パリ・安倍雅信)