SNSに「パリは汚い」写真拡散 フランス、市長火消しに躍起


 路上はゴミ、壁は落書きだらけのパリの写真が3月下旬からツイッターに投稿され、パリ市のイダルゴ市長が火消しに躍起になっている。世界有数の観光都市の名を汚す写真は、新型コロナウイルスの感染が終息すれば、再び多くの観光客が集まることが期待されるパリには痛手だ。

パリの路上に置かれたごみ=4月27日(時事)

パリの路上に置かれたごみ=4月27日(時事)

 パリ市は新型コロナウイルスの感染拡大で清掃作業が遅れており、清掃員も1割減ったと釈明している。だが、この釈明は逆効果、清掃員は医療関係者と並び、コロナ禍でも止められない公共サービスのはず。上昇する失業率と清掃員の減少も矛盾している。

 社会党出身のイダルゴ市長は、来春に行われる仏大統領選への出馬がささやかれている。そのためにはパリ市行政での実績が必要だが、「汚いパリ」は汚点だ。パリ市は4月4日、ツイッターに「中傷キャンペーンだ。古い写真やごみ収集前に撮られた写真もある」と投稿し、右派勢力の嫌がらせだと主張。

 ところが「汚いパリの写真」の投稿は収まらず、行政の怠慢と批判が集中した。イダルゴ氏は、清掃事業に関する各区の権限を夏前までに強化すると約束したが、市長任期内に市の清掃予算を現行の5億ユーロ(約660億円)から倍増するとした選挙公約は果たされていない。コロナ禍で市の収入も減っている。

 2014年にパリ市長に就任したイダルゴ氏は、ドラノエ前市長の下で第1助役を務め、同じ左派で環境優先なのにゴミだらけの状態は助役時代から改善されていない。スペイン出身で14歳の時にフランス国籍を取得した。イダルゴ氏が導入した電気自動車(EV)カーシェアリング「オートリブ」も失敗に終わっている。

(パリ 安倍雅信)