「天安門」26年、強まる抑圧 共産党権力といかに闘うか
岐路に立つ中国の人権・民主派
中国で学生らの民主化運動を武力弾圧した天安門事件から4日で26年。共産党・政府は民主化要求を「暴乱」とした評価を変えない上、言論の自由など憲法に明記された市民の権利要求に対する抑圧を強めており、「天安門事件以降で最悪の引き締め」(人権派弁護士)と言われる。共産党の権力にどう働き掛け、市民の声が反映される社会を実現していくか-。中国の改革と進歩を求める人権・民主派は今、習近平国家主席による集権体制の下で岐路に立たされている。
◇市民権利を要求
「超級低俗屠夫」。このペンネームでここ数年、中国で市民が関心を集める人権侵害・社会問題が発生した際にインターネットなどで積極的に発信し、強権体制に抵抗し続けているのが人権活動家の呉淦氏(43)だ。
しかし、5月28日の国営新華社通信、共産党機関紙・人民日報、公安省機関紙・人民公安報などは一斉に呉氏が「騒動挑発」と「誹謗(ひぼう)」の容疑で刑事拘留されたと異例の報道を行った。「『超級低俗屠夫』の正体を暴露する」と呉氏の私生活や過去の問題を暴いた内容に、改革派知識人は「公安機関と宣伝部門が一体になって『敵』とみなす人物を陥れるため、(1960年代後半の)文化大革命時に展開したようなやり方だ」と批判した。
呉氏が得意にしたのは「殺猪(豚を殺す)」戦略。腐敗幹部や市民の権利を損なう役人が発覚すれば、ネットでその人物の情報や証拠を集めて追い詰める社会運動だ。
公安当局が呉氏を一層「敵視」した契機の一つは、5月初めに黒竜江省の駅で農民が警官に射殺された事件。警官の行為を「正当な職務」と判断した公安当局が国営テレビを通じ、当時の状況を正当化する防犯ビデオを公開した。ネット上でこのビデオが「都合良く編集され、真相を明らかにしていない」と疑問の声が上がる中、呉氏は自ら懸賞金を用意し、当時現場にいた人から動画や証言を集めようとした。
◇社会不満への危機感
習指導部は2014年に入り、憲法の枠内で幹部の資産公開を要求し、社会のうねりを起こそうとする「新公民運動」を推進した著名人権活動家・許志永氏に懲役4年の判決を下した。天安門事件25年の節目直前の昨年5月には不当な拘束制度「労働教養」廃止に貢献した中国を代表する人権派弁護士・浦志強氏を拘束し、1年後に起訴した。
複数の人権派弁護士は「許氏も浦氏も呉氏も皆、共産党体制の転換や転覆を掲げていない。市民の法治や言論の自由の空間を広げようとしただけだ」と語る。
しかし、公安当局は彼らを「死磕派」(死んでも諦めないグループ)とみなして警戒する。習指導部は人権派弁護士やネット上のオピニオンリーダー、NGO関係者らがつながり、体制の安定を脅かすと危機感を強める。
上海の人権派弁護士・張雪忠氏は取材に「ソーシャルネットワークの時代になり、腐敗した官僚体制への市民の不信感が一気に高まり、共産党に対する社会の不満は一定程度に累積している。これに対する危機感が強い抑圧として、影響力を高める人物の逮捕につながっている」と解説した。
(北京時事)