中国と香港カップルに異変

経済格差縮み両者対等に

 香港と陸続きで隣接する中国広東省との人的交流が進み、香港人若年層の結婚観が変わりつつある。特に香港人女性で中国本土の男性と結婚するケースが30年間で約10倍増加。香港と中国本土の経済格差が縮むことで対等な立場での夫婦の在り方が一般的になり、新たな問題も浮上している。(香港・深川耕治、写真も)

香港女性増、不倫も減少

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中国福建省アモイの海岸で結婚記念写真撮影をする中国人カップル

 過去30年で香港人と中国人のカップルが100万組以上誕生していることになるが、カップルの在り方、特徴は大きく変化している。

 英国領だった香港が1997年7月、中国に返還され、17年以上の歳月がたつことで香港の中国化は政経分野だけでなく、人的交流や結婚についても着実に進んでいる。

 香港統計処の発表によると、香港が英領だった1986年、香港人男性で中国人女性と結婚する事例は約1万5000カップル。香港人女性が中国人男性と結婚するケースはわずか675組で、かなり少数派だったが、2013年には7444組に増加した。

 当時はレッセフェール(自由放任主義)による自由主義経済を謳歌(おうか)するアジアの金融センターとなっていた香港にとって中国本土との経済格差は歴然としており、富裕な香港人と貧しい中国人の結婚は経済的な問題が要因との見方が大勢を占めた。

400 「老父少妻」と呼ばれる中高年の香港人男性と若い中国人妻というカップルが主流で、香港人女性が中国本土に嫁ぐ「北嫁(中国に北上して嫁に行くという意味)」と呼ばれる結婚パターンはかなり少数派。夫に手厳しい香港人妻に嫌気が差した香港人既婚男性が中国大陸で「二奶(愛人)」と呼ばれる若い中国人女性の不倫相手を囲う「包二奶」という言葉が流行語になるほどだった。

 しかし、香港が中国に返還され、2003年には中国本土の人々が香港へ自由に訪れることが可能になり、広東省での結婚登記は減少し、香港での結婚登記が急増。不倫トラブルも減少傾向にある。家族の貧困から脱するために香港人男性の嫁になる中国人女性が減り、仕事やプライベートで交流後、恋愛から結婚にゴールインするケースが大半を占めるようになっている。

 一方で新たな問題も浮上している。

 例えば、中国人男性の医者と香港人女性公務員が結婚した場合、お互いに仕事を辞めず、子供の生育も拒否すると、中国本土を拠点に生活することを拒むケースが増えている。仕事を最優先にすることで生まれ故郷から外に出ることを拒み、離婚の危機に直面するケースが急増。かつての貧富の格差による歪みの構造から生活習慣、文化や価値観の差が対等な夫婦関係を大きく左右するように変化した。所得の差が縮まることで「中国人の香港に対する吸引力は下り坂」(広東省婚姻家庭建設協会の陳婉玲会長)との見方が主流となっている。