法王来比控え高まる熱気と混乱

 国民の約8割がカトリック教徒のフィリピンでは、ローマ法王の訪問を間近に控え、次第に熱気が高まる一方、ミサなどの一連の行事に多くの人々が殺到することが予測されており、混乱を防ぐため関係機関が準備を整えている。訪問まで1カ月を切った昨年末に訪問期間が突然連休となったり、マニラ国際空港の利用が大きく制限されるなど、各方面で混乱も広がっている。(マニラ・福島純一)

訪問中の5日間が連休に

ミサには120万人の参加見込む

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昨年12月24日、バチカンのサンピエトロ大聖堂で、クリスマスイブのミサを行うフランシスコ・ローマ法王(AFP=時事)

 ローマ法王は15日に来比し19日まで滞在する予定となっており、大統領府でアキノ大統領の歓迎を受けるほか、台風で大きな被害を受けたビサヤ地方タクロバン市も訪問。18日にはマニラ市内で多くの信者を集め、大規模なミサを行う予定となっている。

 法王の訪比は1995年以来となり、アジア有数のカトリック大国であるフィリピンにとって、まさに国家的行事という位置付けだ。街の至る所に訪問を祝う横断幕が掲げられ、連日のように準備の様子がニュースで報じられるほどの熱狂ぶりとなっている。

 アキノ大統領は国民に対するクリスマスのメッセージで、「法王の訪問で国民の希望と信仰は一層強まるだろう」と、国の信仰的な躍進に大きな期待感を示した。さらに法王の訪問期間中の平日3日間を特別休日とし、土日を挟んだ5連休にすることを発表。訪問期間中は法王の移動に伴う交通規制や、地方からミサに訪れる人々で混雑が予測されるための措置とみられているが、突然の休日追加に企業からは、休日手当の負担や従業員確保の面で困惑する声も出ている。マニラ首都圏の日本大使館も8日に、3日間を休館日にすると発表した。

 さらに訪問の約2週間前になり、法王のミサなどが行われるマニラ市のエストラダ市長が禁酒令を決定した。禁酒令は9日のカトリック行事「ブラックナザレ祭」と、ローマ法王が滞在する5日間に実施される見通しで、一部の飲食店が臨時休業を迫られるなどの混乱も出ている。

 法王訪問の約1週間前となる9日に、マニラ市内で行われた恒例のカトリック行事「ブラックナザレ祭」は、法王訪問の前夜祭の様相を呈し、会場となったマニラ市のキリノ・グランドスタンドには100万人以上のカトリック信者が集結。同じ会場で行われる予定のローマ法王のミサには、少なくとも120万人が詰め掛けると予測され、パレードの見物などを含めると、その群衆は500万人以上に膨れ上がるとみられている。

 警察や教会関係者は、ブラックナザレをローマ法王訪問の予行演習と位置付け群衆の誘導や警備を行い、万全の体制で本番に臨む方針だ。国家警察は不測の事態に対処するため、2万5000人の警官と50匹の爆弾探知犬を各地に配置。国軍は7000人の兵士を展開し厳戒態勢で臨む。

 一方、首都圏開発局のトレンティーノ局長は、法王訪問に際し2000人の交通警官に紙おむつを支給し、トイレのために持ち場を離れることなく、任務を続行させる方針を示し物議を醸している。局長は海外を含む複数のメディアから「おむつ装着令」が注目を集めていることについて、「おむつは宇宙飛行士や米軍兵士の標準装備でもある」と主張し、合理的な判断であることを強調。改めて職員に紙おむつの装着を求めた。しかし、地元メディアによると、多くの職員がブラックナザレ祭の警備で支給された紙おむつを着用していないことが確認されるなど、本番で効果を発揮できるのか不安を残す結果となっている。

 そして、最も混乱が予測されるのは空港利用者たちだ。マニラ国際空港当局は、法王が到着する15日午後2時から7時と、帰国日である19日午前6時から10時30分まで、一部の滑走路を閉鎖し民間航空機の着陸を制限する。これにより国際、国内線のおよそ400便、約6万人の乗客に影響を及ぼすことが予測されており、空港当局は利用者にスケジュールを再確認するよう呼び掛けている。