コロナ禍で広がる教育格差-フィリピンから


 コロナ禍で通学する子供たちの声が地域から消えて久しい。年末、厳格なロックダウン(都市封鎖)こそ解除されたが原則的に18歳以下の未成年者は外出禁止だ。学校も3月からずっと閉鎖している。

 全国でインターネットを使った遠隔授業が昨年10月から開始されたが、フィリピンはアジア有数のネット後進国。電波を捕まえるために、生徒や教師が屋根や木に登ることを強いられる地域もある。特に低学年の場合、保護者がつきっきりで授業を手伝うことも必要で、家庭側の負担も大きい。

 政府が学校再開に慎重姿勢なのは、医療危機が起きかねない綱渡り状況にあるからだ。もし学校で集団感染が発生すれば、家庭にも広がり深刻な状況に陥る。しかしドゥテルテ大統領は、低リスク地域に限定して対面授業の再開をようやく承認した。やはり遠隔授業に無理があると判断したようだが、人口密度が高い都市部で再開する見通しは立っていない。

 オランダを拠点とする国際教育到達度評価学会(IEA)がこのほど発表した小学4年生の数学と科学に関する学力調査で、フィリピンは評価に参加した58カ国中でなんと最下位。ちなみにこの調査はコロナ禍前の2019年に行われたものだ。教育格差がさらに拡大することは容易に想像できる。

 安定した遠隔授業には安価とは言えない高速インターネット接続が不可欠な上に、多くの庶民の家には子供が落ち着いて勉強できるような個別の部屋などない。やはり貧しい生徒たちには教室が必要なのだ。

 さらに長期のロックダウンによるステイホームの影響で、今年はベビーブームの到来も予測される。このままだとコロナ禍前からあった教師不足はさらに加速しそうだ。

(フィリピン・福島純一)