蔡氏の対中慧眼を評価


再選の立役者は中国

 蔡英文総統再選の立役者は中国だ。
 蔡氏は、中国の一国二制度による台湾併合を断固、拒否する姿勢をぶれることなく堅持した。

 半年前に始まった香港の民主化を求める反政府デモの嵐が、中国が半世紀不変と約束したはずの一国二制度の破綻を明らかにしたことで、「今日の香港は明日の台湾」との懸念を強くさせた。

 いわば中国が送った北風が、「嘘(うそ)と暴力」を内在する共産党政権の衣の下の鎧(よろい)をあらわにさせたことで、かたくなまでに中国に対峙(たいじ)し続けた蔡氏の慧眼(けいがん)に評価が高まった。

 好調な経済も、蔡氏再選の追い風となった。台湾株式市場の加権指数は1万1700を超え、30年ぶりの高値更新を果たしたばかりだ。中国から台湾に帰ってきた「回流企業」などが対米輸出を昨年、3割ほど押し上げもした。

 なお、中国の北風がこれから収まる気配はない。福建省などを拠点に中国は常時、台湾に1400基のミサイルを向けている。総統選を前に中国人民解放軍は、空母「遼寧」に台湾を一周させ、昨年完成させたばかりの国産空母「山東」も台湾海峡を通過させた。いつでも武力侵攻できる用意があるとの威嚇だ。

 こうした露骨な「力の信奉者」に立ち向かうには、米国の力が不可欠だ。F16戦闘機や対空ミサイルなどの兵器売却を認めたトランプ政権は、1978年の米中国交樹立以来、最大の支援を台湾に惜しまない。

 総統職は3選禁止。蔡総統2期目の4年間は、後顧の憂いなく 思う存分、自分の信念を貫くことができる。

(台北・池永達夫)