ウガンダ大統領、反同性愛法案に署名
強気の裏にエイズ対策「ABC作戦」の成功
欧米諸国を中心に同性愛はもちろん同性婚を認める流れが強まってきている中、アフリカ中部ウガンダのムセベニ大統領は2月24日、同性愛行為者に最高で終身刑を科す「反同性愛法案」に署名した。強気の背景には顕著な成果を上げている同国のエイズ対策があるようだ。(カイロ・鈴木眞吉)
欧米価値観の押し付け拒否
同国では2009年に、一部の議員らが、同性愛行為の一部に死刑を適用する法案を提出したが、国際社会の非難を受けて棚上げされ、昨年12月、最高刑を終身刑にする修正案が議会で可決されたことを受け、大統領の姿勢が注目されていた。
アフリカ西部ナイジェリアのジョナサン大統領(キリスト教徒)も1月に、同性同士の結婚を禁止する法案に署名・成立させており、両国を含むアフリカ諸国37カ国が同性愛を違法としていることから、今後、同問題をめぐる世界的な論争が高まるのは必至だ。
欧米諸国からは、矢継ぎ早に批判が寄せられ、オバマ米大統領は、同法が成立すればウガンダとの2国間関係が損なわれる恐れがあると警告、カーニー米大統領報道官は「嫌悪感を覚える」とコメントした。
オランダやデンマーク、ノルウェーは、各種支援金の凍結を表明、国連のピレイ人権高等弁務官も、「同性愛への批判は人権侵害」との見解を示した。
それに対し、福音主義キリスト教の敬虔(けいけん)な信徒であるムセベニ大統領は、署名理由について、「男性が男に魅(ひ)かれること自体を理解できない」として、同性愛行為が「不自然な行為」であると見なす一方、「異性愛者であるにもかかわらず、金のため“売春”している」者がいると指摘した。
同法は、同性愛を助長する行為や同性愛者への支援も禁じ、国民に同性愛者の告発も義務付ける厳しいもの。ウガンダの大衆紙レッド・ペッパーは先月25日、同性愛者とみられる200人の氏名を、一部顔写真付きで報道した。
ムセベニ大統領は、インタビューの中で、「欧米諸国からの批判については全く心配していない」、「欧米と協力できなければ、他国と取引する」と牽制(けんせい)、「一方的な価値観の押し付けは社会的帝国主義だ」として、欧米諸国の姿勢を批判した。
同大統領が、強気である理由の一つは、アフリカ諸国で深刻化するエイズ感染問題を劇的に好転させた実績があるからとみられる。 1986年に大統領に就任した同氏は、エイズ対策として、(A)アブスティナンス(自己抑制=結婚するまで性交渉をしない)、(B)ビー・フェイスフル(夫婦が互いに貞節を守る)、(C)コンドーム――を柱とした「ABC作戦」を提唱、同国の80年代初期の成人感染率30%を5・5%に激減させた。コンドーム使用に重点を置くべきだ(米民主党リベラル派)との主張に真っ向から挑戦、「第一優先順位は自己抑制に置くべきだ」と主張した。自己抑制ができればエイズ感染の可能性は激減するからだ。自己抑制を普及させる最善の方法は、子供たちにエイズの恐ろしさをきちんと教えることで、ウガンダでは、小学校4年から教育課程に取り入れ、1週に1度は教えている。ボツ ワナやザンビア、南アフリカの人々も、その方法論を学んでいるという。
同性愛は伝統的家庭倫理を破壊し、エイズのまん延はアフリカの多くの国家の危機をもたらしている。欧米の批判と圧力にさらされるウガンダの選択の評価が定まるのはこれからだ。






