抗体検査キットWondfo 対コロナ「補完武器」に
エミーナジョイクリニック銀座 伊東エミナ理事長
安倍首相は新型コロナウイルス罹患を判定するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を1日当たり2万件実施することを訴えているが、現状は2505件(17日現在)にとどまっている。いまだ解明し切れていない新型コロナウイルスと戦うための武器の一つ、「補完武器」として、抗体検査をPCR検査と同時に行うことも可能だ。今後の感染者増加による医療崩壊を防ぐため、また、検査の入り口の間口を広げ、感染の有無・罹患歴調査のためにも、抗体検査キット「Wondfo」を使用することが重要だとエミーナジョイクリニック銀座の伊東エミナ院長が語った。
(太田和宏)
政府の動き遅すぎる 歴史を教訓に素早い行動を

新型コロナ抗体検査用キットについて説明する伊東エミナ院長=東京・銀座のエミーナジョイクリニック(加藤玲和撮影)
東京女子医科大学医学部卒業後、同大学内分泌内科勤務。2002年、米国ヴァージニア大学留学。ホルモンとエイジングに関する専門的研究を行う。04年、帰国。07年、日本内分泌学会優秀論文賞(成長ホルモンと代謝に関して)受賞。富士河口湖に統合自然医療センター「富士エミーナクリニック」開設。医学博士号取得(大分大学医学部)。10年、東京銀座に「エミーナジョイクリニック銀座」を開設。医療法人社団JOY理事長。
PCR検査は精度が7割くらい。感染しているのに「陰性」と判断される偽陰性、感染していないのに「陽性」と判定される偽陽性というケースが一定数見られる。鼻の粘膜からウイルスの検体を取り、特殊な試薬を使い、温冷を繰り返し培養、数時間で100万倍に増やし、着色して判定するというもの。大変に手間と人員が必要で、技師の技量も検査結果に反映するという。
一方、コロナウイルス抗体検査キット「Wondfo」(製造元SansureBiotech)は、特殊なシートと培養液のキットがあれば簡単に検査できる。血糖値検査のように、指先に小さな傷を付け、血液一滴分をスポイトで取り、キットの皿に乗せ、付属の培養液を一滴垂らす、たったの15分で感染しているかどうか、抗体のある・なしが判定できる。
抗体の血中濃度は図のように、感染当初から急に上昇し、数日後に消える「IgM」と1週間程度遅れて発現する「IgG」という2種類の抗体があり、このキットは両方を感知できる。症状が発出して7日目から3週間くらいの間であれば、感度86%(100人の陽性を正しく陽性と検出する確率)、特異度99%(陰性を真陰性と検出する確率)で抗体の陽性判定ができる仕組みだ。保険適用外で、価格は約8000~1万円。欧州の認定規則にのっとってベルギーの認証機関などが認証しており、世界で流通している中でも感度が非常に高いキットとされている。
伊東院長は、来院者の話として「ウイルスに感染していなければうつされることに、感染していればうつしてしまうことが心配だ」という人が多くいると言う。
また、海外の医療現場では抗体検査キットの検査結果で職場配置の参考データにしているところや、抗体証明を出し、外出許可証明の一つにしている国もある。
国は無策で、実行までに時間がかかり過ぎるという声がちまたに流れている。薬や試薬の開発には利権が絡むものだが、政府・厚生労働省の役人体質、権威主義、前例主義によって、また、罹患が確認されると、病院に隔離され、病床が足りなくなるというのが医学会の意見だ。
だが、今は非常時、「前例にない」とか「慣例だから」とか言っている場合ではない。「PCR検査を先延ばしにしたり、意図的に検査数を減らしながら、抗体キットを使わない理由が分からない、行動の遅い政府は問題です!」(伊東院長)という状態だ。
人類はペスト、天然痘、スペイン風邪など、さまざまなウイルス感染症と戦ってきた。その教訓を生かし、万難を排して国の持てる力を総動員して早急に対処しなければならないときである。