頼りがいある男性復活を
文藝評論家・日本平和学研究所理事長 小川榮太郞氏(下)
今、若者で結婚したい人は男女とも9割近くいるのに、なぜ結婚できないのか。
男女共同参画社会の実現が叫ばれ、男女雇用機会均等法が実施されて以降、「男性が基本的に家計を支える」という考え方、社会の構造が事実上崩れてしまった。若者たちが結婚できないのはそれが最大の原因だ。
世の女性の多くは、頼りがいのある男性と結婚したいと思っている。男は頼りがいがなくてもいい、私も貧乏、あなたも貧乏でも一緒に稼いで頑張りましょう、と本音で思っている女性はほとんどいないはず。しかし現状は男女共同貧乏型社会だ。
なぜそうなったか。
形式的な男女平等を、フェミニストたちが主張し、それをそのまま社会に展開した結果、こういう事態を生んでしまった。
女性の中では、子供を産む、産みたい願望は非常に強い。しかし、結婚して子供を産んで育てるのは私、そして貧乏するのも私、労働も半分は私、というのは、嫌でしょ。普通の女性は、「ばか言うなよ」と思いますよ。
一方、キャリア志向の女性もたくさんいる。ところが現状では彼女たちが闊達(かったつ)にキャリアを築ける状況にもなっていない。多くの女性の子育て願望もキャリア志向の女性も、共に救えていない。男性が家計を支え、女性の人生のキャリアの大きな部分が子育てだという軸はやはり必要だ。
それが女性の生き方でもある。
コアになるのは結婚、出産、子育て。「専業主婦」は社会的に何の位置付けもされていないが、家庭を守る大切な存在だ。子供の数が3人、4人となればなおさらそうで、彼らは社会的にも大きな財産となるわけだから、最も尊い社会的な仕事の一つだろう。それだけの子供を立派に育てるのは、個人の人生としても大変な勲章だ。
今、日本の人口政策として海外の人を入れるのをどう見るか。
人口減少は国力低下につながり、安全保障の問題だ。日本のような高度に安定した産業国家では、人口が減少した場合、消費が落ち込み土地価格など経済の基本になる部分が値崩れし、経済力が落ちることは避けられない。何としても労働人口を維持しなければならない。
現実に“人口不足倒産”が相次ぎ、現場の悲鳴が聞こえてくる。要するに、人口減少があまりにも劇的に起こっているので、移民的な政策をせざるを得なくなっている。
しかし、今、特にヨーロッパは移民の問題で、大混乱を来しているのを見ても分かるが、移民によって人口問題を解決するというのは、態度としては間違っていると思う。
代替策は。
2013年の「子ども・若者白書」によれば、全国では約70万人の引きこもり・ 準引きこもりがいるとされる。また「ニート(若年無業者)」も71万人いる。本当ならばその人たちを社会復帰してあげるようにしたらいい。
もう一つは高齢者対策で、75歳ぐらいまでは、現役並みに仕事をできる人も相当いるだろう。この部分で優秀な雇用を確保できる。国内の年齢幅を広げる雇用政策というのが本来望ましいと思う。
(聞き手=編集委員・片上晴彦)
(終わり)






