若夫婦が作る名産スイカ(北海道・北竜町)
就農フェア契機に夢実現
「今年の北海道は6月が寒く、天候不順でどうなるかと思いましたが、7月に入り晴天が続いているので美味(おい)しいひまわりスイカができています」
北海道の中央部に位置し、旭川から約50㌔の北竜町で、「北竜ひまわりスイカ」を栽培している札幌市出身の塚本忠国さん(32)。同町は人口2000人弱、水田や野菜畑が広がる農業主体の町で、ひまわりスイカは北竜町の名産品。塚本さんを含めて6戸が生産し、地域の期待を担う。
今は出荷のシーズン、例年になく暑い日が続き、ハウスの中は40度を超える。塚本さんは妻の朴圓熙(ウォンヒ)さん(33)と二人三脚で早朝から作業に当たっている。塚本さんが栽培を始めたのは、3年前の2015年だ。
ひまわりスイカは果実が黄色いのが特徴。小玉の部類だが、糖度が高く、すっきりした甘さで「上品さがある」と評判だ。札幌市や旭川市の卸売市場などへ出荷されている。
栄養価も高く、塚本さんによれば、「カリウム(塩分を体外へ排出)、シトルリン(利尿作用)、システイン(ビタミンC酸化防止)、イノシトール(動脈硬化防止)などビタミンやミネラルが豊富」。
塚本さんは高校卒業後、米国で農業技術を1年間、後に道内の酪農学園大学で農業経営を学んだ。しかし農家になりたいといっても、農家の後継者以外すぐに農家になれるわけではない。農地の取得、農機具の準備に、数千万円かかるとのことだった。
そんな時、札幌市で農水省後援の「新農業人フェア札幌」が開催された。北竜町は新規就農者を募集するプロジェクトの一環で、就農支援ブースを出店し、地元の農産物をそろえPRしていた。そこに見学に来ていた塚本さんが、ひまわりスイカに出合った。
「北竜町は札幌から車で2時間ほどの所。僕自身、スイカが好きで、僕が作ったスイカが消費者に喜ばれたら嬉(うれ)しいなと思い就農を決意しました。農業には小さい頃から夢を持っていました」と塚本さん。
2年間の新規就農のための研修はその翌年から始まった。最初の1年目は、ひまわりスイカ農家で後継者を求めていた高橋信良さん(78)の自宅に住み込み、栽培のためのノウハウを懸命に教わった。
それまで単身の移住だったが、昨年、札幌の実家で暮らしていた圓熙さんと2人の子供を呼び、夫婦2人によるスイカ作りが始まった。
圓煕さんは農家の経験がない。「去年は何事も初めてのこと。いろいろな葛藤もあったけれど今は何とか乗り越えた気がします。北竜町は緑が多くて皆親切です。子育てにもいいところですね」と嬉しそうに話す。
現在、塚本さんが栽培しているひまわりスイカはビニールハウスが3棟で広さは約30アール。「ひまわりスイカは温度管理や潅(かん)水、防除のタイミングがとても難しい。それでも今はいいモノをしっかり作って、経営を安定させていきたい」と初心を忘れない。
(人口減少問題取材班)