志位報告が原因で安保無策に

どうなる「民共協力」 27回共産党大会の焦点(3)

「対中」で不破氏の顔に泥

元共産党書記局長代行 筆坂秀世氏に聞く

中国に対してかなり厳しい大会決議案となっているが、対中国はどうなっていくか。

筆坂秀世

 これはある意味画期的だ。1998年に両共産党が関係正常化した後、蜜月関係で来たわけだから。不破さんにとっては、顔に泥を塗られたようなものだ。不破さんは、中国は変わったとさんざん中国をほめてきたわけだから。本当に主観的で「不破主観」だ。どこに「科学の目」があるのかと言いたくなる。

 今年9月のアジア政党国際会議で、中国共産党と核兵器禁止協定でもめて、帰ってきた後、少なくとも核兵器の分野では、中国は平和進歩勢力ではなくなったと言って、志位さんが報告している。しかし、中国のどこに平和進歩勢力の姿があるのか。あるわけないだろう。

 中国共産党を「大国主義」「覇権主義」と最大級の罵倒をしたわけだから共産党としては思い切った批判だ。

決議案に「日米安保条約、自衛隊―日本共産党の立場」との一項目があり、「党の独自の立場を広く明らかにする」などとしているが、主張に矛盾はないか。

 この決議案を読んで、共産党は劣化していると思った。藤野保史政策委員長(当時)が、防衛費は「人を殺すための予算」だと言ったが、軍隊や武器が人を殺すのは当たり前だ。

 では、ベトナム戦争で、北ベトナムの軍隊や南ベトナムの解放戦線の人たちが銃を持って、爆弾を持って、米国と戦ったが、この人たちは人を殺すために戦ったというのか。

 共産党は、民族解放のための闘いだからとして応援した。民族解放のため自国の防衛のためには、誰だって人を殺したくはないけれど、それを結果としてやることはあり得る。人を殺す側になるか殺される側になるかというのは、情緒的な批判だ。科学的社会主義を名乗る政党が使うべき言葉ではない。

 この言葉については、党内で対策会議を行い、そこで一致した意見がそれだった。だから言った後、彼は動揺していない。確信犯なんだ。

 なぜ、ああなったかというと、決議案でもそうだが、共産党には国防論、安全保障政策がなくなったからだ。

 安保条約を廃止します、できることなら憲法9条に照らして、憲法違反の自衛隊もなくします、という。非武装中立は、丸腰論だ。こんなものは安全保障論ではない。

いつからこうなったのか。

 21回党大会ぐらいだったか。それまでは「中立自衛」だった。軍事同盟には入らないが自衛するとしていたのでその当時は、憲法9条を改正するという立場だった。そういう意味では安全保障政策、国防論があった。

なぜなくなってしまったか。

 志位さんが書記局長時代に初めて大会報告する時、「憲法9条は、社会主義の理想に近いものだ」とやってしまった。それからだ。

では志位委員長に責任がある。

 いや、不破さんもOKしていたし、当時、僕も(党執行部内に)いたから、自分にも責任があると言えばある。

 だからその後、右往左往することになる。テレビで「もし侵略されたらどうするんだ」と言われて、「総力を挙げて反撃する」と。「自衛隊はどうするのか」と言われ、「いや、総力を挙げて反撃する」と答えた。

 しかし、あとで不破さんから「あれではだめだ」と電話が掛かってきて、その後、自衛隊を活用すると公然と言い始めた。

 ところが、しばらくすると、その自衛隊活用論も事実上引っ込めた。しかし、国民連合政府構想を出したら、自衛隊をいざとなったら活用するとか、それどころか、日米安保条約の共同作戦条項も発動する、と変わった。その一方では自衛隊をなくす、日米安保条約を廃棄すると言っている。こんな無責任な政党はない。

 昔は「中立自衛」だったが、今は「中立平和」と書いてある。平和は誰でも言える。問われているのは、平和を守るためにどうするかだ。「中立平和」は何ももっていないということ。そういう意味では、安全保障政策がないことが暴露されたような決議案だ。

 日本社会党の非武装中立論を共産党は滅茶苦茶批判してきたが、いつの間にか日本社会党と同じになってしまった。これでは、共産党は失敗する。

(聞き手=早川一郎編集局長代理・政治部長)