北朝鮮への訴訟、賠償請求権の消滅で原告が敗訴
東京地裁が判決、「主権免除」は適用せず、原告側は控訴へ
在日コリアンやその家族らに「地上の楽園」などと帰還を呼び掛け、渡航後は基本的人権を侵害したとして、脱北者の男女5人が北朝鮮政府を相手取り、計5億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。五十嵐章裕裁判長は被害発生から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」を適用するなどし、訴えを退けた。原告側は控訴する方針。
訴訟では、北朝鮮政府が「主権免除」により民事訴訟の対象外となるかも焦点となったが、五十嵐裁判長は日本政府が国家として承認していないことを理由に、主権免除は適用されないとの考えを示した。
五十嵐裁判長は、北朝鮮政府の事実と異なる宣伝による勧誘で、原告が誤信し、渡航の決断をしたと認定。ただ、勧誘から既に46~58年が経過している上、日本へ戻ってから提訴までに13~17年かかっていることに触れ、「除斥期間を適用しない特段の事情があったとは認められない」と述べた。
また、北朝鮮から出国できなかった被害に関する訴えについては、日本の裁判所に管轄権がないとして、請求を却下した。
訴訟では昨年10月に口頭弁論が開かれたが、北朝鮮側は出廷せず結審した。判決後に会見した70代の川崎栄子さんは「許されるなら泣きたい。判決はあまりにも北朝鮮の現実を知らない」と無念さを口にした。
判決によると、5人は1960~72年、北朝鮮へ渡航。2001年以降に脱北し、日本へ入国した。