「故郷の記憶忘れずに」、震災の教訓を次世代へ
福島の小中学校で「震災学習」、遺構見学や体験学習など
11年前の東日本大震災の発生時、幼かったり生まれていなかったりした「震災を知らない子どもたち」は年々増えている。時の経過による風化をどう防ぐか、教訓を次世代にどう継承するか。被災地では「震災学習」に工夫を凝らしている。
「震災は日本各地で起こり得る。自分事として感じてもらいたい」。福島県相馬市観光協会で震災学習を担当する遠藤美貴子さんはこう話す。小学生から大学生を対象に、語り部の講話や「市伝承鎮魂祈念館」などを訪ねるツアーを実施。これまでに全国約1200校、3万人超が参加した。
遠藤さんによると、特に語り部の話の反響が大きい。津波で夫を亡くし、自らも九死に一生を得た五十嵐ひで子さん(74)は、すぐに高台へ逃げなかった自省を込め、「とにかくすぐ逃げる」「自分の命は自分で守る」と強調している。
東京電力福島第1原発事故で、約8割が帰還困難区域に指定されている同県浪江町は昨年6月、地元航空会社と連携し、小型機を用いた体験学習を行った。町立なみえ創成小・中学校の生徒が上空で撮影した動画を地上の児童に送信。立ち入り禁止区域の様子や、震災後に稼働した自然エネルギーから水素を製造する工場などをリアルタイムで確認し、震災の爪痕や復興の軌跡を学んだ。
同校では、町への愛着を深めてもらうため、伝統工芸品「大堀相馬焼」の職人を講師に招き、皿の絵付けや手びねりなどを体験したり、地元の菓子「かぼちゃまんじゅう」を実際に作って食べたりする機会も設けている。
富岡町立富岡第一・第二中学校の三春校では今年度、放射線の人体への影響などを教える「放射線学習」を行った。正しい知識を身に付け、差別や偏見を避けるためだ。
9日には、震災遺構の浪江町立請戸小学校と「東日本大震災・原子力災害伝承館」を見学した。3年の根本大夢さん(15)は「車で避難したことは覚えているが、放射線から逃げる際の行動などは知らなかった。これからの生活に役立てたい」と話した。