福島第1原発の処理水を海洋放出へ、工事始まる


立て坑の深さ十数m、トンネルを掘り放出、風評被害が課題

福島第1原発の処理水を海洋放出へ、工事始まる

処理水の入った瓶に放射線測定器を近づける東京電力職員=1日午後、福島県大熊町(代表撮影)

 東京電力福島第1原発では、処理水が日々発生し、タンクにたまり続けている。海洋への放出方針が決まり、放出に向けた準備が始まった福島第1原発を取材した。

 原発敷地のほぼ中央に位置する多核種除去設備(ALPS)。今月1日に訪れた際も低い音を立てて汚染水処理を続けていた。多くの放射性物質を基準値未満に減らせる設備だが、化学的性質が水に似たトリチウムは除去できない。

 隣には「K4」と呼ばれる処理水保管タンク群がある。今後、測定・確認用のタンクに改造され、放出前に必ずここでトリチウム以外の放射性物質が減っているか確認するという。

 2月には複数のタンクをつないで内部の水をかき混ぜ、濃度が均一になるか測定する試験も実施した。同行した東電廃炉コミュニケーションセンターの木元崇宏副所長は放出時の検査について「第三者の分析機関にも確認を求めることになるだろう」と話した。

 5、6号機近くでは、海水で希釈された処理水が集まる立て坑の掘削が始まっていた。深さ十数㍍の穴の底からはシールドマシン(掘削機)が発進し、沖合1キロまでトンネルを掘るという。

 取材の最後、木元さんは瓶に入った処理水を記者に見せた。汚染水の段階ではさびなどが混ざり泥のように濁っていたが、処理水の段階では無色透明。放射線の測定器を近づけても反応はなかった。

 処理水放出では風評被害が課題となるが、東電はどのように対応するのか。木元さんは漁業者や小売業者などにトリチウムの科学的な性質や処理方法を説明すれば、冷静に判断する人も多いはずだとして、「繰り返し説明を尽くすしかない」と話した。