原発事故の印象残る福島、ダリア輸出で難局打開
輸入規制対象外の花卉栽培を拡大へ、県も支援を本格化
色鮮やかな福島産ダリアが中国で店頭に並ぶ。海外でいまだ原発事故の印象が残る中、被災地では花卉(かき)輸出で難局を打開する動きがある。水産物などの食品と違い、海外の輸入規制対象外の花卉栽培が徐々に広がっており、福島県は新たな産地づくりを目指し支援を本格化する。
世界中の人に福島の花を見てほしい-。福島県塙町でダリアや桜を栽培するフラワーキングの遠藤大輔代表にとって、2012年に北京でオープンした生花店が出発点だ。その後、上海や香港にも出店。20年から塙町で自らも生産し中国へ輸出する。
11年の東京電力福島第1原発事故後、多くの国が福島など被災地産食品の輸入を停止。日本政府は科学的に問題がないとするものの、中国など14カ国・地域は何らかの輸入規制を残したままだ。
花には規制がかからないが、遠藤さんは「(購入する選択肢の)土俵に乗ることすら大変」と話す。原発事故のイメージを払拭(ふっしょく)するため、コロナ禍前は中国の顧客を福島に招いてじかに見てもらう活動に力を入れた。ただ、「直接伝えられる人には伝わるが、その先が難しい」のが実感で、他国も含め店舗を拡大する考えだ。
福島の花卉生産は原発事故後に大幅に落ち込んだものの、徐々に回復しつつある。県も避難者の帰還を促すため、花卉栽培を支援。中でもトルコギキョウは単価が高く、小規模栽培で初期費用が抑えられるため、「(就農者が)徐々に増えている」(県農業総合センター担当者)という。
花卉栽培は、被災した浪江町や楢葉町で取り組む農家が多い。浪江町では、事故後にトルコギキョウ生産の先駆けとなったNPO法人Jin(ジン、清水裕香里代表)から、就農希望者が育て方を学んでいる。
帰還困難区域を除く地域で避難指示が解除されても多くは戻らない。清水代表は「何もしなければ人は来ない」と危機感を募らせ、18年から人材育成を本格化。Jinだけだった花農家は現在7軒となり、23年には10軒に増えると見込む。
県も農業経営者を増やすため、先駆者らと栽培マニュアルを作成。花農家と就農者を対話アプリでつなぎ、ハウス管理などをリモートで指導可能なシステムを安価で利用できるよう開発中だ。清水代表は担い手を増やすため、「年齢を問わず興味を持ってもらえるよう発信していくことが大事だ」と話す。