「街を出るのは不可能」、一日中響き渡る砲火音


ロシア軍侵攻のウクライナ北東部、地下鉄の駅に一時避難

「街を出るのは不可能」、一日中響き渡る砲火音

ロシア軍の侵攻を受け、地下鉄の「8月23日駅」に避難した人々=24日、ウクライナ・ハリコフ(ドミトリーさん提供・時事)

 ロシア軍の侵攻を受け、戦火に見舞われたウクライナでは、首都キエフに次ぐ第2の工業都市、北東部ハリコフも24日は一日中砲火の音が響き渡った。ロシアの進軍ルートにあるとされ、眠れぬ夜を過ごした市民は25日、「街を出るのは不可能」と震えるように話した。

 「今は静かで落ち着いているが、24日午前6時ごろから爆発音が聞こえた」。現地時間の25日午前、大学2年のドミトリーさん(19)はメッセンジャーアプリを通じた取材にこう応じた。ロシア軍の侵攻は24日午前5時すぎに始まり、ドミトリーさんは国境近くに住む友人からの電話でたたき起こされた。

 爆発音は一日中続き、正午から午後5時ごろが最も激しかったという。

 一時避難したのは「8月23日駅」。第2次大戦中にナチス・ドイツから奪還した日にちなんだ名前だという。有事に備えて地下深くに設けられ、ホームの両側に停車した車両などに200人以上が身を寄せた。2時間ほど滞在し、大学の寮に戻った。

 街中では、食料品店や薬局に行列ができていた。「冷蔵庫の要らないインスタント麺、かゆ、スナック菓子を買ったけど、まだ電気や水は使えている」という。

 一部の学生が避難する中、寮で友人3人と身を寄せ合うが「夜は怖くて眠れなかった」と話す。実家は約300キロ離れた南東部クリボイ・ログだ。「そこも多くの施設が巡航ミサイルで破壊されてしまった。いまハリコフから出るのも(危険すぎて)不可能」と明かす。

 全土で戒厳令に続き、総動員令も発令された。ドミトリーさんは「軍経験がないので招集されるとすれば最後だが、総動員令を待っていた。祖国、家族、友人、自由を守るのはキリスト教徒である僕の義務だ」と強調する。「多くの犠牲者が出ているけれど、祖国を守る兵士は誰も降伏していない」と力を込め、「ウクライナのことを忘れないで。僕たちには世界からの支援が必要だ」と訴えた。