原告夫妻「子育てしたかった」 、勝訴も悔しさ
大阪高裁、強制不妊で国に初の賠償命令、手話で喜びを共有
「子育てしたかった思いは変わらない」。旧優生保護法の強制不妊をめぐる訴訟で、22日の大阪高裁判決は国の賠償責任を初めて認めた。原告の大阪府の夫妻は勝訴を歓迎する一方、手術が奪ったものの大きさに思いを寄せ、悔しさをにじませた。
午後2時半の判決言い渡し。手話通訳やモニターの字幕に目を凝らしていた傍聴人らは、閉廷後に顔を見合わせながら手話で静かに喜びを分かち合った。
夫妻はいずれも聴覚障害がある。70代の妻は一度は妊娠したが、出産直後に赤ちゃんを亡くした。その後、同意なく不妊手術を受けていたと判明し、怒りと悲しみを抱き続けてきた。
判決後の記者会見で、妻は喜びを表しつつも、「夫婦で子供を産み育てたかった思いは今も変わらない。知らぬ間に子を産めぬ体にされたのは悔しくてたまらない」と手話の最中、自身の胸を時折たたいた。「こういう差別は二度と起こらないように」と強く願った。
80代の夫は「同じ立場に立って助けてください」と昨年末の意見陳述で太田裁判長に訴え掛けていた。判決を受け、大きな身ぶり手ぶりで「戦いは本当に長かった」と振り返るとともに、全国でも勝訴判決が続くことを期待した。一方、自身が高齢であることから、国側には「上告はしないでほしい」と迫った。