スピードスケート500m、森重航が一気に銅
伝統種目で輝いた21歳、持ち味のカーブの加速を発揮
男子500メートルの最終結果が出ると、森重は誇らしげに日の丸を手にした。日本伝統の種目に3大会ぶりのメダルをもたらす銅。ほぼ無名だった立場から、一気に五輪の表彰台にたどり着いた。
7組前で地元中国の高亭宇が五輪新をマーク。異様な熱気を帯びた会場の雰囲気にも、のまれなかった。同走選手のフライングで、スタートは仕切り直しとなった。それでも集中力を切らさずに飛び出した。100メートルを9秒63で通過すると、残り1周のラップは金メダリストを0秒04上回る24秒86。「自分の力は出し切れた」。持ち味のカーブの加速を存分に発揮した。
今季ナショナルチームに加わり、初戦の全日本距離別選手権で初優勝。その後ワールドカップ(W杯)初参戦で表彰台、優勝、日本男子2人目の33秒台と瞬く間に結果を出した。そして「目標にはしていたが、想像もできていなかった」というメダリストに。初舞台での滑走を「楽しかった」とまで言えた。
3年前に亡くなった母俊恵さんの話になると、神妙な面持ちに。会場に入る前に母の写真を見詰め「行ってきます」と心の中で伝えた。「こういう結果を届けられて喜んでいるんじゃないかな」としみじみ語った。
将来が楽しみな21歳は「また4年後、8年後も目指そうという気持ちになっている」と早くも視線を先に向けた。夢の階段を一足飛びに駆け上がった大学生は、これからもどんどん扉を開いていく。(時事)