ジャンプ小林陵侑選手、地元・岩手の恩師ら歓喜
24年ぶりの「金」、母校を訪れた元教え子に王者の風格
北京五輪ノルディックスキー・ジャンプ男子のエース、小林陵侑選手(25)=土屋ホーム=が、個人ノーマルヒルで日本ジャンプ陣24年ぶりとなる金メダルに輝いた。地元・岩手県の母校で跳躍を見守った恩師らも喜びを爆発させた。
「重みのある自信を感じた」。東京五輪開幕前の昨年6月、母校の盛岡中央高を訪れた元教え子に、伊東雄一スキー部監督(50)は目を見張った。
共に五輪代表になった兄・潤志郎選手(30)=雪印メグミルク=の恩師でもある伊東さんは「兄弟は正反対。潤志郎はとにかく真面目で、言われたことを黙々とやる。陵侑はいい意味で要領が良い。悪く言うと、ずる賢いかも」と笑う。兄は高3でノルディック複合ジュニア世界選手権を制した。伊東さんは「比べられたくなかったと思うが、(陵侑選手は)悔しいそぶりも見せなかった」と話す。
週末はコーチとジャンプ台へ通い、学校でのトレーニングでは自分に必要なものは何かを常に考えていたという。伊東さんは「新人類」と評価。競技に向き合う姿勢は高校生離れしていた。
「喜怒哀楽を見せるのをクールじゃないと思うタイプ」。ただ、それが「どこか軽いノリ」のように感じることもあった。平昌五輪に出場した後も、伝統のジャンプ週間で日本勢2人目の総合優勝を成し遂げた後も、印象は変わらなかった。
ところが昨年、後輩の生徒を前に北京五輪への思いを語る姿に、風格を感じた。「高校から見ていて初めて。充実したトレーニングが自信につながっているな」。この年末年始のジャンプ週間で2度目の総合優勝を達成したことで、思いを確かにした。
大会本番は、母校で伊東さんら数人が固唾をのんで見守った。1回目に104・5メートルをマークし、首位で迎えた2回目で99・5メートルを跳躍すると「よしっ」と言葉が飛び交った。金メダルが確定した瞬間は総立ちで歓喜した。伊東さんは「プレッシャーに負けず、いつも通りの滑りをしてくれた。うれしいの一言」。3年間担任を務めた佐々木美咲教諭(33)は「楽しんでいる感じがした。そこが結果にもつながったのでは」とほっとした様子だった。