福島・葛尾村、帰還困難区域で初の準備宿泊


帰還を決めた内藤さん夫婦が宿泊「この日来ると思わず」

福島・葛尾村、帰還困難区域で初の準備宿泊

帰還困難区域での準備宿泊に際し、自宅前で取材に応じる内藤一男さんと妻光子さん=30日午前、福島県葛尾村

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、福島県葛尾村の野行地区で30日、帰還に向けた住民の準備宿泊が始まった。同区域での準備宿泊は初めて。自宅に着いた内藤光子さん(63)は「こういう日が迎えられると思っていなかったのでうれしい」と喜んだ。

 内藤さん宅は、来年春ごろの避難指示解除を目指して村が設けた「特定復興再生拠点区域」にある。新築直後に東日本大震災が発生したため、寝泊まりするのは初めてで、2泊を予定している。

 地区に約40軒あった家屋のほとんどは解体されたが、内藤さん夫婦は定住すると決め、立ち入り許可が出て以降、何度も自宅を訪れ管理を続けてきた。共に宿泊する夫の一男さん(64)は「泊まることを夢見ていた。この家でようやく夕飯が食べられる」と涙ぐんだ。

 一方、準備宿泊の対象となっている30世帯のうち、この日訪れたのは内藤さん夫婦のみ。避難先での定住を決めた住民も多く、光子さんの姉も戻らないつもりだという。