「新しい相撲」の阿炎、前傾姿勢で大関を圧倒
貴景勝を押し出し、謹慎中「相撲と向き合うと決めた」
番付上、通常なら組まれることがなかった大関との1敗同士の一番。阿炎は立ち合いから長いリーチを生かし、もろ手突きで貴景勝の体を起こすと、たまらずいなした相手を攻め続け、何もさせずに土俵外へ追いやった。
光ったのは押すときの前傾姿勢だった。八角理事長(元横綱北勝海)は「頭が下がるから体重が乗る。ついつい相手も引いてしまう」と分析。188センチの長身を丸めるように下から攻める姿に「体で覚えないとできるものではない」。稽古の成果にほかならないと評した。
新型コロナウイルス対策のガイドライン違反で謹慎していた約半年の間、阿炎は「相撲と向き合うと決めた」と振り返る。日々の稽古を見直し、今までしようとしなかった対戦相手の研究にも励んだ。十両だった先場所、「新しい自分の相撲を取っていきたい。戻ってきたのではない」と語った。突き押しに徹し、がむしゃらに前に出る今の取り口に、安易な引きに頼りがちだったかつての姿はない。
14日目は賜杯に王手をかけた照ノ富士との一番が組まれた。「今から横綱のビデオを見て、自分の相撲を取れるように準備していきたい」。気負わず淡々と語る姿も以前とは別人のようだった。